第7話

弾まない会話
3,920
2021/03/06 04:06
今日は兵庫の高校稲荷崎に合宿です
入畑「あなたは及川の隣な」
『わかりました』
(なんで…マネージャーは主将の隣ってか?)
入畑「やっぱり及川俺の隣」
及川「え?!なんで?!」
入畑「合宿の内容教えるからな」
入畑「じゃー隣は〜」
松川「俺座っていいっすか」
入畑「いいぞ」
(てかなんで監督が決めんだよ)
『あの、なんで監督が決めるんですか?』
入畑「一応お前も女子だしな」
『なら尚更自分で相手選んじゃダメなんですか…』
入畑「…主が…
『はい?』
入畑「なんでもない、さっさと座れー」
(おじさんめ…)




新幹線で移動中
松川「」
『』
気まずい空気が流れる
気分転換にと思いスマホとイヤホンを出した
(何聞こっかなー)
選ばれたのはMrsの青と夏
松川「ねぇ、何聞いてんの?」
『Mrsの青と夏です』
松川「いい曲だよね」
『そうですね』
短い会話を終わらせ
私は少し目をつぶった
新幹線の揺れる音
みんなの騒ぎ声
そして松川さんの喋りかける声
私は曲を止めイヤホンを外し少し息を吐いて言葉を発した
『…なんですか?』
松川「俺暇でーす」
『え、私むっちゃ暇じゃないです』
松川「音楽聞いてるだけでしょ?なんか話そうよ」
『え…』
松川「えって何」
『…私会話内容ないんで松川さんからなんか話してください』
松川「可愛げのねぇー女だね」
『ディスリですか』



松川side
あなたはいつも真顔だ
虫が出ても
「うわ、びっくりした」
って真顔で言うだけ
1年間一緒にいたけど
正直真顔しか見たことがない
しかも前髪で顔隠れてたし
そして最近やっと本性、化けの皮が剥がれた
前髪を横に流し髪は三つ編みではなく1本結び
伊達メガネを外して少しナチュラルメークをしている
「「音楽聞いてるだけでしょ?なんか話そうよ」」
『え…』
あなたのことを知りたい
その思いで言った言葉だった
「「えって何」」
『…私会話内容ないので松川さんからなんか話してください』
「「可愛げのねぇー女だね」」
少し口を尖らせムスッとした表情で
『ディスリですか』
(そんな表情もできるんだ)
近くで見ないと分からないほどの細かい表情
「「これから合宿じゃん?それなのに身元隠さなくていいの?」」
『どうせメイクとるんならこのまんまでいいやって思いまして』
「「ふーん」」
あなたは会話のキャッチボールが苦手なのかと言うぐらい話さない
「「なんでスパイカーからセッターに変わったの?」」
『…スパイクが苦手だったからです』
(ありゃ、地雷踏んだか?)
少し暗めの顔であなたは言った
『周りの女子よりも背が高いせいでスパイカーという道に進められ、才能がなかったから空いてるポジションにされました。』
「「そうなんだ…じゃぁセッターは嫌いなの?」」
『いえ、小さい頃からやってたのは実際にセッターでしたし』
「「ねぇ、セッターとしての心魂、みたいなの教えてよ」」
"あなたの努力の結果を教えて"
この意味を込めて発した言葉
『…心魂、ですか。』
あなたは少し黙り目を閉じた
『"私の周りの努力を踏みにじるな"、ですかね』
「「踏みにじる?」」
『はい、私の元にボールが来るまで、相手の今までの努力、それを上げる仲間の練習の積み重ね、それを台無しにしてトスを失敗したら申し訳ないです』
あまり喋らなさそうなあなたが長々と語った言葉
俺の知ってるあなたは
「はい」「いいえ」「そうですか」「わかりました」
それしか言わない姿しか知らなかった
「「本当にさ、操れるの?」」
『…操れる訳ではありません』
「「じゃぁ、なんで…わかるの?」」
『人間観察』
「「マジ?」」
『…いえ、見えるんです』
「「は?」」
『今のは聞かなかったことにしてください。私寝ますね』
「「あ、うん。おやすみ」」
あなたは何事も無かったかのようにイヤホンをつけた









あなたには何が見えるのだろう
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それではByeBye

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