拝啓 藤宮 あなた様
よぉ、あなた。 元気か?
恐らく、お前がこれを読んでるってことは
俺は死んでるんだな。
違和感しかねぇな…。
まず一つ、お前に謝りたいことがある。
病室に行った時、
そのまま最後に会うことになってすまなかった。
一つ言うと、俺はお前とまた過ごしたかった。
それも、一生。
嘘じゃねぇ、本気だ。
俺はお前と籍を入れて、過ごしていたかった。
だが、俺はもう残り少ない命だ。
籍を入れたところでお前だけが悲しむことになる。
お前の過去を聞いてからずっと思っていたが、
これからお前が悲しむことだけは嫌だった。
だから、あの日以降
お前とは関わらないことを決めていた。
お前、俺を探しに川辺とか和菓子屋とか行ってだろ?
よく俺はあそこに居たから逃げるのが大変だったよ…
まぁ、それも少し楽しかったがな。
でもこれでもうお前から逃げることはないんだな。
やっぱりお前と居たかったよ。
長くなるから、この辺で終わるか。
なぁ、あなた。
最後に、言わせてくれ。
俺 は お 前 を 愛 し て た 。
じゃあな、あなた。
これから充実した生活を送ってくれ。
幸せになれよ。
不死川 実弥
涙が、溢れる。
その涙が、手に持っている文に落ちる。
実弥さんの書いた字を、愛おしく指でなぞる。
私だって…ッッ
『 私 だ っ て
実 弥 さ ん と 一 緒 に 居 た か っ た で す よ … ッ ッ 』
だが、その言葉は伝わることなく
虚しく、消えていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私は今、実弥さんの墓の前に立っている。
花を供え終えて、手を合わせる。
_実弥さん、私やっぱり幸せになれません。
貴方がいないと、前みたいに笑えないんです。
笑うどころか、
ここに来たら泣いてしまうんです…ッッ、
…でも、私、頑張って生きます。
寿命を迎えるまで、生きてみせます。
だから、私はおばあちゃんになりますが…
向こうで、再会しましょう?
そして、一緒に生まれ変わって…
次の世界で、絶対に結ばれましょう。
それまで、待っていてくださいね。
実弥さん。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
藤の花の下で、男女の2人が出会い、抱き合った。
そして10年後、2人は籍を入れた。
2人は、今までにないくらい…
太陽のように明るい、笑顔だった。
「もう、一生離さねェ…ッッ」
「私も、一生離れませんよ…ッッ」
next➵
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。