会社に帰ってから
スマホにはるくんからの
着信があったことに気付いた
珍しいな。
〇〇INはともかく
電話をくれるのはいつも夜なのに
わたしはオフィスのフロアを出ると
すぐに、はるくんに折り返しの電話をした。
なんだかはるくんの声が
いつもよりトーンが低いような気がする
はるくんから「会いたい」なんて言われて
一瞬でテンションが上がるわたし
電話の向こうで
はるくんがクスッと笑ったのが聞こえた。
会える…
明日はやっとはるくんに会えるんだ!
ダメだ。
顔が緩む…。
わたしはニヤつく自分のほっぺたを押さえながら
フロアに戻るために振り向くと
そこに伊吹さんがいた。
少し気まずいなと思いながら
そう答えた。
満面の笑みでそんなことを言ってきた。
伊吹さんが言うと本当に冗談に聞こえないって…
わたしは伊吹さんの体をクルリと反転させると
フロアに戻るため
伊吹さんの背中を押しながら歩き始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。