空耳かな?って思ったけど
はるくんが振り返った。
険しい表情をしたはるくん。
やっぱり占い最下位は当たってたんだ。
そういえば…この女の子…
だいぶ前に居酒屋で…
はるくんと認識したその人は
可愛いワンピースをふりふりさせながら
こっちへやって来た。
直感で『はるくんと関係を持ってた人』だと感じた
はるくんは
明らか、機嫌が悪くなってびっくりした。
女の子がそう言いながら、わたしに近づいてきた。
女の子は、いやらしくニヤッとした
女の子はとても楽しそうに笑ってる。
嫌な予感しかしないし
いつの間にかはるくんとわたしの手は離れていた。
はるくんの手をみつめてみても
気付いて貰えなくて、寂しい右手に泣きそうになる
わたしの時もそうだったもんね~って
女の子は可愛く笑う
この人はなにがしたいのか分からないし、
この人の話を聞いてるだけで苦しくなる
傷つくよね。
若者の無防備な言葉は。
いや、もうわざとに違いないけど。
わたしは涙がこぼれ落ちないように
必死に我慢した。
女の子がまたニヤけて
なにかを言おうとしたとき、はるくんが遮った
声はすっごいだるそうな
なんというか、女の子はびびっていた。
普段のはるくんなら考えられない事だ。
だから俺は美麗とは別れるつもりはないから。
って、はるくんはわたしの手を握りながら
そう、言ってくれた。
はるくんはそう言うと
わたしの手を引いて女の子の
横を通り過ぎた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!