第64話

プレゼント
139
2020/12/19 17:20
晴人
晴人
美麗?ちょっと目、閉じてて?
美麗
美麗
え、うん
晴人
晴人
そのままね

わたしが泣き止んでからはるくんは





こんな事を言い出した。







わたしが目を閉じていると





ゴソゴソしだして、わたしの首元に触れた。 





はるくんの指と、細い金属の感触。
晴人
晴人
いいよ、目開けて??
美麗
美麗
はるくん…なに…
はるくんは満足そうにわたしを見て






「やっぱりこれやな」と笑っていた。
晴人
晴人
美麗、おいで

訳が分からないわたしの手を引いて





はるくんはわたしを寝室にある






大きな鏡の前に連れてきた。
美麗
美麗
…あ…

鏡の中には




ピンクゴールドの華奢なネックレスをしている






わたしがいた。




ペンダントトップには小さなダイヤが1粒






シンプルだけど華やかな光を放っている。

美麗
美麗
はるくん…これ…!
わたしは自分の後ろに立つはるくんの





方へ振り返った。
晴人
晴人
よく似合ってる…やっぱり俺の目は確かだね
美麗
美麗
これ、どうして?どうしたの?
晴人
晴人
たまにはいいやろ?笑
サプライズ
美麗
美麗
サプライズって…
晴人
晴人
なかなか楽しかった。
彼女の為にアクセサリー選ぶの笑
美麗
美麗
…はるくん

はるくんが「彼女」って言った。




わたしのこと?
晴人
晴人
それは…お守り代わり
美麗
美麗
彼女って…わたし…?

わたしは思わず馬鹿な事を口走ってしまった。
晴人
晴人
…は?いやいや、
美麗以外誰がいんの

それとも俺、そんなに信用ないわけ〜?






と言って、はるくんが







わたしを後ろから抱きしめて






わたしの肩に顎を乗せた。


はるくんがチェーンを弄りながら





わたしの耳にキスをした。




胸がギュッとなる。





はるくんの一言で、こんなにも揺れる。





きっとこんな風にわたしを揺さぶる人は…






はるくんしかいないから…。






だから、わたしもうんと素直になろう。





沢山はるくんを愛して






わたしも沢山愛して貰おう。




わたしは体の向きをクルッと変えると





勢いよくはるくんに抱きついた。
晴人
晴人
おわ、美麗っ!

体当たりに近い勢いではるくんに飛びついたから





二人とも態勢を崩して





そのまま後ろにある





ベッドの上に倒れ込んでしまった。
晴人
晴人
美麗ちゃん、積極的笑



はるくんが笑う。




笑いながらわたしをぎゅって抱きしめてくれる。






もうそれだけで充分幸せだ。
美麗
美麗
…はるく〜ん…
わたしもはるくんをぎゅって抱きしめる。
晴人
晴人
ねぇ
はるくんがわたしを抱きしめたまま話し出した。
美麗
美麗
…なぁに?
晴人
晴人
初めて出会った時の事、覚えてる?
美麗
美麗
覚えてるよ?
晴人
晴人
俺、めちくちゃかっこ悪かったなぁ…。
初対面の女の子にお金借りちゃって
美麗
美麗
はるくん、背中がもう困ったオーラ出てたんだもん笑
晴人
晴人
俺…あの後また会えないかなって思って
何度も何度もあのコンビニ行ったんだよ?
美麗
美麗
え?そうだったの?
晴人
晴人
…どうしても会いたかった
美麗
美麗
晴人
晴人
初めて2人だけで食事したときの夜景も凄かったし
美麗
美麗
うん、凄かった
まるで自分が夜景の中に浮かんでるみたいだった笑
晴人
晴人
俺も思った!周り全部窓だったしね笑

はるくんと同じことを思っていたんだ…。




そんな些細なことすら





とても大切な宝物のように感じる。
晴人
晴人
よっ…と

はるくんが起き上がって





ベッドに腰をかけたので





わたしも起き上がって、彼の隣に座った。
晴人
晴人
今から真面目な話するから
そのままでいいから聞いて?
美麗
美麗
…へ?

真面目な話?




はるくんの声のトーンが変わった。

晴人
晴人
特別なことじゃなくていい。
一緒にお美味いもの食べてお美味いって言ったり…一緒に綺麗な景色を見て 
綺麗だって感動したり
美麗
美麗

前を向いていたはるくんが





わたしと向き合うように体の方向を変えると





わたしの手を優しく握って言った。
晴人
晴人
美麗と、もっともっと「嬉しい」とか「楽しい」とか…一緒に感じたい。
だから…俺と一緒に暮らそ?
…美麗と一緒に過ごせる少しの時間でも大切にしたい
美麗
美麗
い、一緒に…住むって…
晴人
晴人
…ダメ…?
美麗
美麗
そんなこと、出来るの?
晴人
晴人
出来るやろ。もうお互い大人なんだし
それに…
美麗
美麗
晴人
晴人
もう…別々の家に帰って
離れ離れになりたくないんだよ…
美麗
美麗

わたし…



てっきり自分ばかり、好きなんだと思ってた。




でも彼はわたしとは世界が違う





だから…迷惑かけちゃいけないって





邪魔しちゃだめだって。




そんなことばかり考えてた。

わたしは、自分で勝手に壁を作ってた…

バカだな…わたしは。





はるくんはいつだって





こうやって…




わたしと向き合ってくれていたのにね。



ほんと…バカ。
美麗
美麗
わたし… 意外と朝弱いよ?
晴人
晴人
…え?
美麗
美麗
洗濯とかお掃除は…好きだけど
はるくんのお眼鏡にかなうかなぁ…
晴人
晴人
美麗
美麗
お料理は、はるくんの好物、研究しないとね
晴人
晴人
美麗…それって…
美麗
美麗
…はるくん

わたしははるくんを真っ直ぐに見つめて言った。




迷いなんか、ない。
美麗
美麗
わたしも…はるくんと一緒にいたい
晴人
晴人
よっ、しゃぁ〜!!

はるくんはガッツポーズをして




嬉しそうにわたしに抱きついた。

一緒に住むからって、何かが変わるわけじゃない。




将来の約束も出来ないし





公的に認められるものなのかもわからない。





ただ、一緒にいる。





それだけでも、わたしは充分幸せなの。





はるくんが、わたしの壁を壊してくれた。




だったら…飛び込むしかないじゃない?

楽しいことだけじゃなくて




辛いことや苦しいことも、きっと沢山ある。



だけど、逃げたくない。




すぐに揺らいでしまう決心かもしれないけど…





わたしはこの時初めて




本当の意味で、はるくんとの恋愛に腹を括った。

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