俺は、横たわってる美麗を抱き起こして
おんぶをして歩き出した。
フワフワと美麗から香る男の匂い。
そのたびに、嫉妬に狂いそうになったけど
今は、そんな事言ってる場合じゃない。
達也くんと大我が俺に向かって走ってきた。
だってあれが、本心だから…
美麗は誰にも渡さない。
けど…誰なんだよ…
俺の美麗を泣かせた奴は
絶対そいつを許さない。
けど、いったいどうやって突き止めればいい?
…それにしても
美麗のオシャレなファッションからはまるで
組み合わせが合ってない男のパーカー。
そんなわけはないって思っていても…
よぎる不安。
俺以外の男に触られたんじゃないかって…
俺の言葉に足を止める達也くん。
やっぱり
達也くんは知ってるんだね…
男にやられた以外に何があるっていうんだよ。
達也くんはそう言って
俺らの前から足早に消えていってしまった。
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ふと、目を覚まし目を開けると
見慣れた天井が。
まずいな…こんな汚い身体で
とにかくお風呂に入って少しでも綺麗に…
って思ったけど
体中痛くて、起き上がれない。
また出て来そうになる涙。
はるくん以外の男に
触られた事実は変わらないのに…
消えはしないのに…
1番迷惑を掛けたくない
人物の名前を呼んでしまう…
求めてしまう…
嫌な光景が…
汚い残像がわたしの頭から離れない
ガチャ
はるくんがコンビニの袋を持って
部屋に入ってきた。
わたしはとっさに壁側へ向いてしまい
はるくんに背を向けてしまった。
はるくんがベッドに座ったのが分かった。
はるくんはそう言って
わたしの頭を優しくなでてくれた。
はるくん…ダメだよ…
わたし汚いよ…
はるくんの隣にいる資格なんてない…
隣にいちゃいけない人間なの…
はるくんは、わたしの
首筋についている汚い印を指でなぞろうとした。
わたしは触らないでと意味を込めて
体をゆすった。
はるくんの声が震えていた。
泣いてる…?
どうしてはるくんが泣くのよ…
はるくんはわたしの頭に優しくキスをしてくれた。
わたしの言葉をさえぎるようにして
はるくんは、わたしの上に跨がって正面を向かせて
はるくんはわたしの唇にキスをした。
久しぶりのはるくんとのキス。
そのせいでその時間が長く長く感じた。
そう言うと
わたしの首筋の汚い印にキスを落とした。
首や胸など、汚い印の上に綺麗な印が重なる。
すべての汚い印に
はるくんの綺麗な印が重なっていく…
それに伴って、わたしの身体に走る鋭い痛み。
でも心地いい、嬉しい痛みだ。
久々にわたしに向けられたはるくんの笑顔。
はるくんはそう言って、
わたしを強く抱きしめた。
すごくうれしかった。
わたしの不安をかき消すような言葉だった。
辛かった事を
すべて忘れさせてくれるような
そんな言葉だった。
分かってるくせに…
わたしがなんて返すか分かってるくせに
聞かないでよ…
久々の幸せなこの感覚。
はるくんはわたしの首筋に
新しい印をつけた。
そう言ってはるくんは、わたしから降りようとした
わたしはとっさにはるくんの両方を持って
キスをしていた。
はるくんは一瞬驚いた顔をしたが
すぐ真顔になった。
はるくんは、噛み付くようなキスをしてきた。
その言葉が聞こえたのと同時に
わたしはまた、はるくんに溺れた。
今日のはるくんは特に、容赦ない
許してくれない
何度も、何度も、何度も
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!