わたしは、病院から出て
会社に向かった。
結局麗奈が目覚めることはなかったのだ。
会社について、エレベーターを待っていると
外回りから帰ってきた伊吹さんが
後ろからやってきた
例のプレゼンの件を聞いたかったらしい。
昨日の彼が嘘みたいに
ビジネスライクに話を進めてくる。
資料をパラパラとめくりながら
頭の中で仕事の段取りを
シュミレーションしていたら
伊吹さんがクスッと笑った。
わたしはちょっと呆れて伊吹さんを見ると
伊吹さんがわたしの耳元に近いて
小さな声で
と、伊吹さんは余裕たっぷりな顔で笑って言った。
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…なんだか疲れたなぁ
わたしは家に帰ると
何もする気になれずソファに横になった。
腕で目を隠すようにして目を閉じていたら
いつの間にか眠ってしまったみたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!