第4話

い た ず ら な 君
1,009
2023/02/02 03:50
転入して、少し経った。


今日は朝から体術。

少し離れた所で、さっきから野薔薇ちゃんが延々とパンダに投げ飛ばされているのをボーッと見ている。



ちなみに私も誘われたけれど丁重に(必死に)お断りした。アレは無理。きっと私がやったら死を覚悟することになると思う。



かといって突っ立っているのもあれなので、ちょっと前までは軽くランニングしていた。
ただ体力が無さすぎてすぐに撃沈し、今に至る。


石でてきた階段に座り、私の走った方がよいのでは?VS疲れるからやめとけって!という2つの精神がさっきから喧嘩している。


どうしたもんかなぁ…
狗巻棘
狗巻棘
すじこ~
私
おっふぁあっ
突如、うなじに当てられた冷たいペットボトルの感触。反射的に身体が仰け反り、変な声が出る。

そして聞こえたおにぎりの具。犯人確定である。真実はいつも一つ。
私
ちょっと狗巻君~…びっくりした…
狗巻棘
狗巻棘
ツナ
振り返ると、案の定私を恐怖へ陥れたペットボトルをもった狗巻君が、私の反応を見てケラケラと笑っていた。


んもう、変な声聞かれてほんと恥ずかしいんですけど。笑ってる狗巻君もイケメンだから許すけどね!ボーテ!100点!


狗巻君はひとしきり笑い終えると、私にキンキンに冷えたペットボトルを渡してくれた。

買ってきてくれたのだろうか。

私
これ私にくれるの?
狗巻棘
狗巻棘
しゃけ
ちょっと意地悪な所もあるが、狗巻君は優しいと接している限りわかる。
特殊な事情はあるものの、至って普通の男子高校生なんだなと、最近思っていたところだ。


狗巻君はそのまま私の隣に腰掛けて、水をガブガブ飲み出した。


そういえばさっきまで野薔薇ちゃんをキャッチしていたような気もするから、休憩しに来たんだろうか。





ちょっとだけ横を向く。見ているのがバレないように。

額から汗を滴らせ、水を飲む狗巻君の横顔は、とても絵になっていた。


太陽が照らすのも相まって、綺麗だな…かっこいいな…なんて、


つい、見とれてしまった。

狗巻棘
狗巻棘
…高菜?
私
!あ、ごめん!?!
視線に気づいた狗巻君が、不思議そうにこちらを見る。
ちょっとだけって思っていたのに、めちゃくちゃ見てしまっていたようだ。お恥ずかしい…


誤魔化すようにペットボトルを傾け、乾いた喉に水を流し込んだ。




つん、


と狗巻君の指が触れる感触がしたかと思えば。
狗巻棘
狗巻棘
【実はそれ、さっき一口飲んじゃったんだよね】

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