…………………え?
ブーーーーーーーーッ!!!!!
綺麗に弧を描いて水が宙を舞った。なんなら虹も見えた気がする。気のせいか。
顔を真っ赤にして後ずさる私を見て、狗巻君は馬鹿にしたようにプッと一息笑う。
息も絶え絶えな私に対して、綺麗な長い指を狗巻君は自身の口にトントン、と当てた。見ろ、という事だろうか。
その仕草でさえ色っぽくみえちゃったのはここだけの話。
う・そ・だ・よ
確かに、彼の口はそう動いたように見えた。
思わず立ち上がって大声を出す。
狗巻君はニヤケ顔のまま、両手を顔の前で合わせる。ごめんね~みたいな感じだろうか。可愛いなオイ。(ちょろい)
それだけを吐き捨てて、狗巻君から顔を背け座り直す。
するとまたつん、とつつかれた。
狗巻君は満足気に口角を上げる。
頭に血が上って、恥ずかしくて熱くて死にそうになった。
見てたけども。確かに見てたけれども。
え、え、えっち、なんてそんなイケボで言うんじゃないよほんとに。私みたいなのだと軽率に死ぬから。ほんとに。
てかずっと見てるの知ってたんかい。早めに言ってよもうちょっと。
顔を見られたくなかったので、組んだ足に顔を埋めて目を閉じた。
ニヤニヤと、私をからかって楽しんでいる狗巻君の顔が目に浮かぶ。
ほんとに悪ノリがすぎます、狗巻君。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。