【木村良平 side】
あなたちゃんは、泣きながらそう言った。
あなたちゃんの震えはますます大きくなる一方だった。
それにしても、こんなあなたちゃんは初めて見た。
これはノブも同じだと思う。
いつも笑顔で頑張っているあなたちゃんに、こんな本性があったなんて…。
俺になにか出来ないかな…。
あっ、そうだ!あの手があった!
俺はあなたちゃんに近づいて、震えている右手を優しく包み込むように握りしめた。
コレは、俺の母親が昔教えてくれた『魔法の呪文』。
っていうか、効果抜群じゃん!
するとあなたちゃんは泣くのをやめて、また深い眠りに落ちた。
よかった…。でも、どんな怖い夢を見てたんだろう…。
【岡本信彦 side】
あなたちゃん?
僕はすぐ振り返ると、そこには泣きながら震えるあなたちゃんがいた。
僕は心配そうに良平さんに聞いた。
こんなあなたちゃん、見たことないよ…。
やっぱり、心配…。
って、こんなこと言われたら、よけい心配になるっ…!
なんか嫌なことでもあったのかな…?
そうだよね…。だからこんなに怖がっているんだよね…。
どうにかして助けてあげたい。…でも、どうしたらいいのかな?
すると良平さんがあなたちゃんに近づき、
優しく包み込むかのようにあなたちゃんの右手を握りしめた。
僕には良平さんがあなたちゃんに何を言ったのか分からなかった。
でも、胸が苦しくなった。
なんだ…これ…?
そう言えば、前にウィングが教えてくれたっけ…━━━━━━━━
あれは2ヶ月前。ある収録現場での事だ…
確かに、ウィングの言う通り、なんかモヤモヤする。
コレってまさか…『嫉妬』?
嫉妬するって、こんなに辛いことなんだ…。
そうして僕と良平さんは、あなたちゃんの部屋を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。