スマホの共有フォルダにある、
「 Untitled 」をタップした。
眩しい光に包まれる感覚は、何度やっても慣れないや
《 誰もいないセカイ 》
やっぱりここは静かで何も無くて、…それでいて
とても落ち着く場所だ。
冷たくもなく暖かくもない地面に仰向けになったら、
ミクがそのグレーの髪を揺らしながら傍に座った。
こてんと首を傾げて、そう聞いてきたミク。
別に特別ひとりになりたいって訳じゃないし、
ミクは…ただ側にいてくれる。
ただ、見守ってくれるみたいで、居心地悪くない。
側にいて嫌味を言われるよりかはずっと。
そういえば私、ミクと…どこか距離置いてた所も
あったからなぁ。
この機会に、ミクとゆっくり話してみたい。
そう、思ったんだ。
私が嫌になって逃げたのは、音楽っていうより…
もっと別物だ。
かと言って、音楽が好きかどうかは分からない。
今でもクラシックは嫌いだし、ピアノも
バイオリンも見たくない。
ミクと話しすぎちゃったな。
再び、スマホの「 Untitled 」をタップした。
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。