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第8話

【一小節目 消えた秘密のノート】-7
その日の夕食は気が重かった。
中間テストの結果を受け、我が子のお小遣い金額を議論する両親。
私はただ黙ってご飯を食べ、決議を待つしかなかった。
お父さん
まあ、大目に見てもいいんじゃないのか? 平均点を下回ったのはたったの一教科で、しかもギリギリだったんだから
そう口にしたのはお父さんだった。
お父さん
それに、大好きなテレビ番組を観るのも我慢して勉強頑張ってたんだろう?
ああ、いつも頼りないお父さんが神様のように見える……あとで肩もんであげよう。
え、姉ちゃん、こっそりスクダン観てたよ
櫻井遥
櫻井遥
ちょ、ちょっと! 翼!
勢いよく茶碗をテーブルに置き、弟の翼を睨みつけた。この子はいつもこういう肝心なときに空気の読めない発言をする。
おそるおそる両親の顔色をうかがうと、二人とも呆れた目で私を見ていた。
お母さん
だめです。甘やかすのは遥のためにならないわ。頑張ることはもちろん大事。でも、社会に出れば結果しか見られないことがたくさんあるんですから
そう言って、お母さんは食べ終わった自分の食器をキッチンに運んだ。
お父さん
でも、なあ……あまりに恩情がないというか……
お父さん、ナイス……もうちょっと頑張って……。
お母さん
あら、じゃあ、お父さんの月々のお小遣いから遥にあてがってもいいの?
洗い物をしながらお母さんは背中で冷たく言い放った。
お父さん
おい、翼。ブロッコリーも残さず食べなさい
目を泳がせながら話題を変えるお父さん。
意気地なし……!

櫻井家のお小遣い金額決定会議はこれにて終了した。


夕食を終えた私は、自分の部屋のベッドに腰をかけて深くため息をついた。
予想していたとはいえ、改めて正式に決定を下されたことで気分は地に落ちていた。
壁に貼ったスクダンのポスターが視界にはいる。
ごめんね、ケイタ君。キャラソンCDを買うの、まだまだ先になっちゃいそうだよ。

それにしても、大人ってやっぱりエゴイストだ。
教育って大人のエゴを子どもに押しつけることなんだ。
結果が何よりも大事って、そりゃそうなんだろうけど。
そうなんだろうけど……。

脳内ですらまともに反論することができない自分が嫌になる。
結局、主体性のない私は親が見せたい景色の中で生きていくしかないんだ。

親が見せたい景色──……。
ふと、授業中に書いた詩のことを思い出し、カバンからノートを取り出す。
違う、これは日本史のノート。
もう一度、カバンの中を探してみる。
これは化学のノート。これは数学、これは英語、古文、情報……。
教科書、筆箱、食べかけのお菓子……。

カバンの中身をすべて取り出し、逆さにしてみる。
ホコリがパラパラと床に落ちた。

ない。