その日の夕食は気が重かった。
中間テストの結果を受け、我が子のお小遣い金額を議論する両親。
私はただ黙ってご飯を食べ、決議を待つしかなかった。
そう口にしたのはお父さんだった。
ああ、いつも頼りないお父さんが神様のように見える……あとで肩もんであげよう。
勢いよく茶碗をテーブルに置き、弟の翼を睨みつけた。この子はいつもこういう肝心なときに空気の読めない発言をする。
おそるおそる両親の顔色をうかがうと、二人とも呆れた目で私を見ていた。
そう言って、お母さんは食べ終わった自分の食器をキッチンに運んだ。
お父さん、ナイス……もうちょっと頑張って……。
洗い物をしながらお母さんは背中で冷たく言い放った。
目を泳がせながら話題を変えるお父さん。
意気地なし……!
櫻井家のお小遣い金額決定会議はこれにて終了した。
夕食を終えた私は、自分の部屋のベッドに腰をかけて深くため息をついた。
予想していたとはいえ、改めて正式に決定を下されたことで気分は地に落ちていた。
壁に貼ったスクダンのポスターが視界にはいる。
ごめんね、ケイタ君。キャラソンCDを買うの、まだまだ先になっちゃいそうだよ。
それにしても、大人ってやっぱりエゴイストだ。
教育って大人のエゴを子どもに押しつけることなんだ。
結果が何よりも大事って、そりゃそうなんだろうけど。
そうなんだろうけど……。
脳内ですらまともに反論することができない自分が嫌になる。
結局、主体性のない私は親が見せたい景色の中で生きていくしかないんだ。
親が見せたい景色──……。
ふと、授業中に書いた詩のことを思い出し、カバンからノートを取り出す。
違う、これは日本史のノート。
もう一度、カバンの中を探してみる。
これは化学のノート。これは数学、これは英語、古文、情報……。
教科書、筆箱、食べかけのお菓子……。
カバンの中身をすべて取り出し、逆さにしてみる。
ホコリがパラパラと床に落ちた。
ない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。