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第2話

【一小節目 消えた秘密のノート】
目を開けるのがこわい。
なぜなら、そこに私が望んだものがないことはわかっているから。
いつだってそうだ。
期待すればするほど、失望は大きくなる。
それならいっそ、このまま永遠の眠りについてしまいたい。

クラスメイトの話し声。椅子が床をこする音。
教室内の雑音が遠ざかり、私のちっぽけな体を残したまま、意識だけが暗闇に溶けていく。
桂木香澄
桂木香澄
ねえ、遥。いつまでそうやってるのよ?
その声で、体からはなれかけていた意識が無理やり連れ戻された。
櫻井遥
櫻井遥
だって、見るのがこわいんだもん
桂木香澄
桂木香澄
はいはい。現実逃避もほどほどにね。もうすぐ次の授業はじまるよ
前の席から話しかけてくる香澄がどんな顔をしているか、目をつむっていてもわかる。幼稚園からの長い付き合いだからね。
きっと目を細め、口をへの字に曲げて、呆れ顔で私を見つめているに違いない。

深呼吸をして、おそるおそるまぶたを持ち上げた。
暗闇の中にぼんやりと光が流れ込んでくる。

神様、お願いします──……。

両手で握りしめた試験の答案用紙。名前欄に書かれた「櫻井遥」の文字は我ながら美しい。
そんな美文字を気にする様子もなく、すぐ横に書き殴られた赤い数字。
六十一点。
ああ、やっぱりそうだ。悪い予感はいつも当たってしまう。
私は答案用紙にむかって、がっくりとうなだれた。
桂木香澄
桂木香澄
ちょっと大げさじゃない?
ため息交じりにそう言う香澄の顔を、上目づかいでチラッとのぞき込んだ。
さっき予想したとおりの表情を浮かべている。
櫻井遥
櫻井遥
香澄には私の気持ちなんてわかんないよ……
桂木香澄
桂木香澄
うーん、まあ、お小遣い半額はたしかにキツイけどね。次また頑張ればいいじゃん
うなだれたままの私の頭を、香澄は赤ちゃんをあやすようにポンポンとたたいてくれた。
でも、今はその優しさを素直に受け止めることができない。
櫻井遥
櫻井遥
他人事だと思って……
捨て台詞を吐きながら、答案用紙を抱き込むようにして机に突っ伏した。