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第7話

【一小節目 消えた秘密のノート】-6
小学生の頃からの趣味で、ノートはこれで八冊目。毎日の生活の中で感じた悩み、不安、悲しみなどの感情をもとに思いのまま書き連ねている。ほとんどがネガティブな内容で、ポジティブな作品が生まれるのはごくまれだ。
今の二つの作品はまだマシなほうで、自分でも目を覆うような痛々しいものもある。このノートが他人の目に触れることは、つまり私の社会的な死を意味する。絶対に誰にも見られてはならない。
本当なら自宅の机の引き出しに鍵をかけて保管しておきたいところだけど、困ったことに作品のアイデアというのは夏の夕立のように突然降ってくるもの。そのとき、なるべく鮮度の高い状態でノートにしたためるために、こうしてカバンに入れて持ち歩いているのだ。

さあ、さっきの感傷的な気分が薄れないうちに新作を書いてしまおう。
私は静かに目をつむった。
暗闇の中で「これだ!」と思うフレーズを探す。
周囲の情報や、雑念を取り払うには目を閉じるのが一番。ただ、授業中にこれを長くやりすぎると居眠りしていると思われてしまうので注意が必要だ。

さっきまで思いをめぐらせていたこと。
幸せとは何か。
子どもたちの幸せを願う大人たち。
自分が見たい景色。
大人が見せたい景色。

頭の中にある漠然としたイメージを削り出し、言葉の輪郭を形作る。

うん、いける。
すぐに目を開けてシャーペンを手に取った。
板書を書き写すフリをして黒板をチラッと見ながら、ノートに芯先を走らせていく。


〈グリーンスカイ〉

 目の前に真っ白なキャンバス
「好きな風景を描いて」って誰かが言う
 私が描いたのは緑色の空と青い色の草原

 その人は不満げに笑って
「好きな風景を描いて」ってもう一度言う
 ようやく気づいたの
 私の好きな風景じゃダメなんだと

 仕方なく青い空と緑の草原を描いた

 この手は何でも生み出せる
 この足はどこへでもいける
 そのはずだった そのはずだったのに
 誰かの顔色を見てしまうのは自分自身
 私が描きたい景色は何?


そこまで一気に書き上げて、私はシャーペンを机に置いた。
書きながら言いたいことが変わってしまうことはよくある。この詩も、最初は大人に対する不満を表現するはずだった。
でも、そうじゃない。原因は大人ではなくて「自分自身」なんだ。
本当はそれがわかっているから、言葉になって姿を現す。

ふと、窓の外に目をやった。
絵の具を塗りたくったように鮮やかな青空が一面に広がっている。

私が描きたい景色って何だろう?