第2話

ただの伝説
201
2018/08/12 06:44
目の前には栗色の髪をした女の子

岩場に打ち寄せた白波によって

しっかりと確認することはできないが

足の形は見受けられなかった。



「……は?なにこれ。」


困惑しながらそう呟いた。

人魚なんて空想上の生物だし

人魚に会ったらやばいとか…歌がどーとか

人魚の肉は〜とか、色んな考えが

頭の中を駆け巡った。


「コホッ……あ、あ〜……これ??」


そう言って彼女は尾びれを海から出した。


「っ喋った!?」


「失礼ね!私だって喋るわよ。」


「うわぁ!?怒った!?」


「何言ってっ……ふふん♪

わらわに無礼をはたらくとは…

どうしてくれようか…?」



この海のように透明感のある…

けれども少し掠れたような声で彼女は話す



「へ…?」


我ながら間抜けな声が出る。



「ふふっ嘘よ。
人魚なんかじゃないわ。」



「いや、だって!尾びれ!!」



「これはマーメイドスーツ。 コホッ
買ったはいいけど、さすがに恥ずかしかったのよ」


彼女はそう言うとマーメイドスーツとやらを
脱ぎ始めた。


「…なんっだよ。人間か〜…」


そうだと分かってホッとする


「なに?人魚伝説信じてた?」


「バッ……そんなんじゃねーよ。」


「あっはは!
オーケー,そーゆーことにするね。」


「だっから違うって!」


そう、俺は人魚なんてそんな話は信じてない

あんなのただのおとぎ話だし

ただの言い伝えだし、ありえないし?


うん。そう。俺は信じてない!

さっきのは……動揺しただけだから!!



「ケホッ…君さ、この町に住んでるの?」


「違う。ここにばーちゃんの家があって
今は里帰りってとこ。」


「ふーん…そっか。ケホッ…コホ」


「お前さっきから大丈夫?
なんか咳してるけど…夏風邪?」


「ん〜……夏風邪だったらまだいいんだけど」


「ん??」


「いや、なんでもない。こっちの話。
君名前は?暫くここに居るんでしょ?」


「いるけど、お前から名乗れよ。」


「…面倒くさいやつね。
鈴浦柑奈。あんたは?」


「柳瀬壱琉。」


「いちる…ね〜、よろしく。」


「よろしく。
お前…鈴浦はここに住んでんの?」


「柑奈でいいよ。
私もここに住んでる訳じゃない…かな?
訳あって夏休み中はここにいるの。」


「訳あって…な。
そのマーメイドスーツで泳ぐため?」


「そんなんじゃないわ、バカ
チルチルってそんなに人魚好きなの?」


「は?チルチル!?あと信じてないから!」


「そ、チルチル!壱琉だからチルチル
魔法少女っぽくていいでしょ?」


「良くねーよ!」


「チルチル面白ーい!」


「面白くねーよっ!」



今さっき初めて会ったのに

お互いをからかい合ったりそうじゃなかったりしているうちに

時間は昼から夕方へと移り変わろうとしていた

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