第13話

想い
94
2018/08/24 02:16


わざと意識しないようにしていたのに…


「…っ2度も言わせないでよ。壱琉のバカ」


そういって柑奈は背を向ける。

辺りは真っ暗で

ある程度目は慣れたとはいえ

表情なんてみえないのに。


「……好きだよ。声だけじゃない。」


「え………?」


「でも,これ以上は言わない。
俺たちはたまたまここで出会っただけ
お互いの帰る場所は違いすぎるだろ」


「…でも…そんな…。」


明かりなんて無くてもわかる。

柑奈の瞳からは雫が溢れていた。


「……ほら、ひと夏の〜って言うだろ?
あれだと思ってさ。 …うん。」


言葉の通り、俺と柑奈が帰る場所には

比べ物にならないほどの違いがあった。

きっとこれ以上言ってしまったら

俺が柑奈の足を引っ張るような気がして…


「…バカ。
帰る場所が違うなんて当たり前じゃん!
それでも……それでも私…っ」


頭ではわかってる。

わかっているけれど…やっぱり無理だった。


「…だめだ。」


「………っそっか。」


「俺の負け。」


「…は…ぃ?」


「今ならお前を想う気持ち
どのファンにも負けないくらい強いから」


「…クスッ…なにそれ?ふふっ♪」


「ダメだった?」


「ううん、ぜーんぜんだよ!」

プリ小説オーディオドラマ