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第10話

人魚の涙。

歌えないの。


柑奈の悲痛な叫びに似たそれが

波音だけの世界に響く



なんで?

あんなに綺麗な歌が歌えるのに?

なにがあったんだよ?



聞きたいことは簡単に出てくる。

でもそれを言うのは

酷だってわかっているから



大丈夫だよ

何があったか聞くよ?


なんて言葉もあまりに無責任だ。



俺は何も言わずに…言えずにいた。




波音だけが鼓膜に響いていた。





「私ね、セイレーンが大好きなの。」


柑奈は水平線の彼方を眺めたまま

ゆっくりと口を開く



「素敵な曲を作ってくれて…

こんな私を支えてくれて…さ。

私、歌うのが好きでバンド組んで

セイレーンとしてデビューできた。

けれど…私が評価して貰えたのは

歌じゃなくて顔だった…。」



評価して貰えたのは顔…。

その言葉で胸が痛くなる。


たしに柑奈は整った顔立ちで

初めて出会った姿は

神話にでも出てきそうだった。


…まぁ、マーメイドスーツ着てたし。



「私ね…初めは名前が売れるならって

そう思ってた。

でもさ、やっぱり曲を聞いて欲しい

ちゃんと歌で評価されたかった。

みんなが作ってくれた素敵な歌だから

ちゃんとみんなに聞いて欲しくて…

それでムリして、喉潰しちゃったの。」


柑奈の頬には

悲哀の色をした雫が伝っている


「……それで…。」


最近のセイレーンの歌が

苦しそうに聞こえた理由がわかった。
「それで…ここに逃げてきたの。

海は元々好きだし

私のこと知っている人もいないからさ。」



「…それで、喉は? 大丈夫…なのか?」



「本当はもう治ってる。そう言われてる。

けど、歌うのが怖くて…大きな声もね。」



「…そっ…か。」



「っ……ごめん

こんな話して! 暗いし、嫌だよね。」



「そんなことねーよ…。

…その、なんてゆーか。

んな辛い話、話してくれてちょっと嬉しかった。

いや!ごめん!俺,最低だな。」



「そんなことないわ。

…あの時、いい歌だって。

素敵な声って言ってくれた時,嬉しかった。

メンバー以外で…しかもあんな顔して

キラキラした表情で言ってくれたから。

そんなチルチルを最低なんて思わないよ」


「…ありがとな。」


「それはこっちのセリフだよ。ありがと。」