《Hyongwon Side》
「ねえ!!!メガネくん!!」
「…った」
俺の鼓膜が破けるくらいに響き渡ったのはあの可愛い声。
あの顔に似合うのかは分からないが高くて少しハスキー。
「カカオ交換しよ?」
「…なんで」
「えっ、なんでって、あの、昨日、小テスト全部合ってたから、先生に褒められたし、ありがたいと思ったから、?」
昨日のあの事をした張本人に話しているとは思えない様なバレバレな嘘を話してくる。
でも"カカオ交換しろ"だってさ。
勿論交換するよな。
「ん」
「ありがとう!」
「ん」
そんなキラキラした目で喜んじゃって。
俺の理性が崩壊する前にさっさと帰ろ。
「え、ちょっと。」
教室から出ようとした時、呼び止められた。
「ん?」
「帰んの?」
「ん」
「なんで置いてくの!!!」
「…え?」
あの子から出てきた言葉は意外なものだった。
「帰ろ?一緒に。」
「……いいよ」
結局断る訳もなく一緒に帰ることに。
帰り道とは言え、昨日初めて話したばかりなこともあって、
会話が弾む事もないだろうと思われたが、
流石はクソ陰キャの俺とは違って煌びやかな世界にいる彼はずっと口を動かしている。
「俺たちもう同じクラスになって結構経つのに、はじめてしゃべったのが昨日なんだよねwなんかウケるねw」
「ん」
「てか、思ってたんだけどさ、メガネくんって以外とイケメンなんだね?」
「いや…」
「…メガネくんマジでコミュ障すぎでしょwさっきからカオナシだよ?wまぁ俺と話していくうちに治るといいけどね〜」
「そうだね」
……………。
突然、彼の口が止まった。少し異様な空気が流れたが、また直ぐに話を始めた。
「ねぇ、メガネくん。なんで俺がカカオ交換しようって言ったか分かる?」
「えっ…」
「昨日してもらったキスが忘れられなかったからだよ。」
「そう、か」
「何が言いたいかと言うと、その、もう一回、キスして下さい。」
「……じゃあさ、付き合って。」
「えっ?」
「付き合ったらいつでもキスできるでしょ。」
「…うん、いいよ。よろしく。」
ようやく手に入れる事が出来たあの子。
いつもの癖で、スイッチが入った時だけコミュ障は治る。
これから色んな事を試そう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。