ずっとずっと聞きたくて仕方なかった声なのに
いざその瞬間になると動けなくなる。
『…っあの』
そう言って先生は私の肩を掴んで
私は先生と向き合う姿勢にさせられた。
「…っ先生!!」
やっと出せたその言葉。
でも先生の返事は思ってたものとは違った。
『は?先生?お前誰だよ』
え…
『俺はお前のこと知らないし、何?追っかけ?』
『なら邪魔。出てって。婚約者来るし』
冷たく放たれた言葉。
婚約者までいるなんて…聞いてない。
私は病室を出て、ナースステーションを通ると
[あのジョングクさん。婚約者さん綺麗よね〜]
[でも記憶喪失でしょ?ジョングクさん]
[まあでもいいんじゃない。今がいいんだから]
という声が聞こえた。
どこかで聞いたことがある。
記憶喪失は
本当に忘れたいことを忘れるらしい。
つまり私は
ジョングク先生の厄介者でしか無かったということ
私はやっと現実に引き戻されたみたいだ。
倉庫の中でのあの言葉も行動も
全部私に向かっての愛だと思っていた。
でもそんな事有り得なかった。
それから私とジョングク先生は
一切会うことが無くなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。