もうこの現実から逃げる事など出来ない。
知らないふりなど出来ない。
もう一度病院へ行く。
先生に逢いに行くんだ。
ソンウとの関係も全て切ったんだ。
私は出来るはず。
そう思ってもう一度病院へと足を運んだ。
静まり返った夜の空気。
夏に近づく季節とはいえ
やっぱり夜は肌寒い。
面会時間ギリギリだったのに気づいて
足早と病室へ向かう。
ドアには「전정국」の文字。
やっぱり少し迷いはある。
怖いのは当たり前。
でもこの怖さを越えなければ
幸せなんか絶対に手に入らないから。
引き戸を右へ引いた。
ここは個室だからベットがひとつ見える。
でも誰もいない。
ドアを閉めようとして
引き戸を左に引こうとしたら
ずっとずっと聞きたかった
その愛おしい声。
『…誰っすか。俺の病室に何の用ですか』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!