結婚式当日。
いつもより早く目が覚めたのは、緊張と楽しみと、幸福感でいっぱいやからかな?
横を見れば、まだ呑気に寝てる葵。
ほんま、この人は緊張する事って殆どないんやろなって思う。
起こさへんようにベッドから出て、シャワーを浴びに行く。
元々、緊張しやすい方やし…
未だにライブとかでも緊張する。
けど、ほんまに結婚とか実感ないなぁ…
シャワーを終えて、部屋に戻ると寝てたはずの葵はベランダに。
ボーっと景色を見ながらタバコを吸ってる。
フワッとした笑顔で、そんな事言われたら嬉しくて仕方なくなるって分からへん?
ほんまに私には天然タラシ…
準備って言う準備もないけど…
貴重品とかを纏めて、秘書さんが迎えに来てくれたから車に乗り込む。
TWICEのメンバーは私にとったら家族。
けど、式を挙げるのはアメリカで。
今、個々の活動が中心になって、みんな忙しいって分かってる。
仕事の大切さも…穴を空ける大変さも知ってるからこそ"呼ばへん"って決断をした。
外を見れば綺麗な教会。
葵が日本のウエディングプランナーさんに頼んでくれて、その人にもお世話になって。
ほんまに色んな人達に支えられて、今日があるんやって実感する。
教会に入れば、プランナーさんが待ち構えとって。
挨拶よりも先にヘアメイクに着替え…
びっくりするぐらい手際良く一つ一つの工程が終わって行く。
ドレスに着替え終わって。
パパとママが入って来て、折角綺麗にメイクしてもらったのに涙が出そうになる。
「幸せになるんやで」
両親からの一言で我慢してた涙が流れる。
「泣いたらあかんやん」って言ったママも泣いとって、その涙に我慢しとった涙は流れ落ちた。
メイクが崩れへん様に、私の涙を拭ってくれるママ。
ノックの後に聞こえてきた秘書さんの声。
返事を返せば、ゆっくり開くドア。
両親に挨拶をしてくれて、そのまま両親を別室へと案内してくれた。
1人になった控室。
天気良くてよかったなぁ…とか、葵は今頃着替え終わって多分仕事の電話してるんやろなぁとか考えとった。
声がする方に振り向けば、真っ白のスーツでいつも以上に優しい顔をした葵が立っとった。
サッと後ろから出されたバラの花束。
泣いたらあかんのに、泣かせにくるの反則やわ…
花束を受け取れば、フワッとした笑顔。
少し話をして、その間に照れるほど何回も「綺麗」って言われた。
そして今…
私はパパと教会の扉の前に立っている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!