3ヶ月後…
まとまった休みをもらって、結婚式の為にアメリカへ。
結婚式の準備で、仕事終わってからも忙しくて3ヶ月なんかあっという間やった。
嬉しさとか幸福感はあるけど、実感は湧かんくて…
何か不思議。
10時間以上のフライトを終えて、アメリカに到着。
空港には、葵…ではなくて秘書さんが迎えに来てくれた。
私の荷物をいくつか持ってくれて、車まで案内してくれる。
いつも優しいけど、今日は一段と優しい感じがする。
今回もホテルじゃなくて、葵のマンションに泊まるんやけど…
車が停まった場所は、めちゃくちゃ大きいビルの前。
サッとドアを開けてくれて、とりあえず降りる。
前を歩く秘書さんの後に続いてビルの中に入ると、色んな人が「Congratulations.」って声を掛けてくれた。
1つのドアの前で立ち止まって。
秘書さんがノックする。
ドアの奥から「はい」と日本語で返事が返ってきて、開けた先に見えたスーツでメガネ姿の葵。
「どうぞ…」って秘書さんに言われて、社長室に入る。
私が中に入ったのを確認して、秘書さんはそっとドアを閉めた。
なんやねん、それ。
目を逸らしたし…
可愛すぎるやろ。
実際、ずっと集中しとって。
秘書さんが社長室に入ってくるまで、話しかけれへんオーラが出まくってた。
タバコを持ったままの葵と目が合う。
仕事中、ずっと集中してたし…
1本だけならいいかな?
私の言葉を聞いて、嬉しそうな顔でタバコを吸ってる。
最後まで吸い切る事なく、電源を落として帰る支度をし出した葵。
そのまま、マンションに行くと思ってた。
けど、指輪を頼んだショップに寄って出来上がった指輪を受け取って。
次は、式を挙げる教会に行ってからレストランへ。
その後も、色々と打ち合わせとか準備とかで大忙し。
うん…そうやよな。
ゆっくりなんかしとれん。
だって、結婚式…2日後やもん。
全部終わって、マンションに着くと日付けが変わってた。
中々、車から降りひん葵の手と、キャリーケースを引っ張って。
秘書さんにも手伝ってもらいながら、やっと部屋の中に。
疲れ切って、廊下に座り込んだ葵を思いっきり抱きしめた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!