ゆっくりと開いた扉。
その先に見えるのは、真っ白なスーツを着てフワッとした笑顔の葵。
ゆっくりパパとバージンロードを歩きながら、私の最愛の人に一歩一歩近付いて行く。
聖壇の前まで行くと、パパから葵にバトンタッチ。
そっと…けど、しっかりと受け取ってくれた手から最大級の優しさが伝わる。
聖壇へ…と思った時。
葵が扉の奥を見て、動かんくなった。
牧師さんと、私。
あと、私の両親に一言謝って。
扉の方に歩いて行く。
その行動を不安になりながら、目で追えば…
扉の奥に見える車椅子に乗った男性の姿。
何か話している様子で、数分後には車椅子を押してバージンロードを歩く2人。
決して笑顔ではないけど、葵の気持ちが届いた事が嬉しくて涙が溢れる。
私の目の前まで来て、差し出された葵の手を握る。
お義父さんはそのまま会長秘書さんと外に出てってしもたけど…
少しでも来てくれた事が嬉しかった。
そこからは、ドラマとかでよく見る場面が実際に執り行われて。
牧師さんが誓約の文章を読み上げて
このセリフを実際自分が言うなんて夢にも思ってなかった。
指輪の交換。
…めっちゃ緊張するんやけど。
指震えてるし、指輪落としそう。
「すみません」って言いながら、笑ってる葵にちょっとムカつきながら。
やっと、はめる事が出来た。
ベールを上げられて、やっとちゃんと見る事が出来た葵はカッコよくて。
いつも以上に見惚れてしまう。
ずっと、「"誓いのキス"は恥ずかしい」って言ってたもんな。
かっこいい姿から、一気に可愛くなるの反則やで?
けど、私も両親おる前で流石に恥ずかしくて。
軽く頷いてしもた。
ほんまにおでこに触れるか触れへんかのキス。
目を開けるとフワッとした笑顔。
この短時間で何回この大好きな笑顔を見れたんやろか。
両家の家族に見守れながら、式も退場を残すのみ。
フラワーシャワーまでしてもらって、扉の前まで歩いて行く。
ゆっくり開いた扉。
その先に見えたのは、私の大好きな8人の姿。
「ミナ みーたん ミナオンニ」
「結婚おめでとう!!!」
ほんまは来て欲しくて。
けど、そんな我が儘言えんかったのに。
涙が止まらへんやんか…
サプライズ得意ちゃうって言ったくせに。
全然、得意やん。
飛び込んで来たさーたんを受け止めながら、みんなの言葉にどんどん涙が溢れる。
そんな私を笑いながらも、駆け寄って抱きしめてくれる8人。
今日だけは、私が世界一幸せ者って言ってもいいよな?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!