第13話

ホントの話
53
2019/08/09 09:38
12月。もう2学期は終わりを迎え、今日はクリスマスの3日前。
聖夜の夜は当然、恋人同士で約束している。
だが皇成の心のなかには、暗いモヤモヤが棲みついて、離れなかった。
皇成
皇成
(こんな中途半端な気持ちで…。俺、サイテーだな。でも、沙彩を傷つけたくないし。蓮には先輩がいるし……)
沙彩
沙彩
あと3日!楽しみだねー!
皇成
皇成
うん。そーだね。



________________________
一方、蓮と洸の関係は冷え切っていた。
洸は王子と呼ばれるだけあって告白も絶えず、遊び相手にも困らない。真面目なように見えて、高2にしてかなりの経験があるのだ。
2ヶ月までは我慢していたのだろうが、11月の終わりからついに、
「ヤらせてくれない」
と不満がたまり、女遊びが目立ちはじめたのが原因だ。
_クリスマス1週間前
洸センパイ
洸センパイ
ね、もう別れよ。好きじゃなくなっちゃった。
蓮
分かってました。2ヶ月と少しの間、ありがとうございました。
蓮
(あれ。案外傷ついたりしないものだな…そもそも浮気されても何とも思わなかったもんなぁ)
洸センパイ
洸センパイ
バイバイ
蓮
さようなら
呆気なく終わった。洸は、蓮にとって初めての恋人だった。ただ。
「ほんとうに好きだったか」
そう聞かれた時、自信をもって答えられないであろう自分が、すこし嫌だった。
洸と別れて、その場に1人残った。
蓮
会いたいなぁ…
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クリスマスイブ。今夜はクラスの皆でパーティーだ。
男子
盛り上がってこーぜー!!
女子
ねぇ大輝くん!一緒にうたおー!
大輝
大輝
いーよー!!
ザワザワ
沙彩
沙彩
皇成!なんか歌ってー!!
皇成
皇成
えぇ?しょーがないなぁ。
選んだのは、片想い中の女の子を描いたラブソング。マイクを握り、歌い出す。沙彩に向けて。























……のはずだった。サビに近づくにつれて、頭の中がその人で占められていく。パフォーマンスのつもりだったのだが、そんな余裕もない。

優しくてやわらかいあの声で。
花が咲くようなその笑顔で。

満たされていく。



歌にねつがはいり、周りにクラスメイトがいることも忘れた。サビに入る頃には、40人いる中の誰もが黙って。ただただ黙って。皇成の歌に聴き入っていた。

_シーン
最後の旋律が消えても、余韻に浸るように、誰も口を開かなかった。
皇成
皇成
…ふぅ。
男子
ヒューー!!!
女子
うまーい!!
女子
カッコいー!!
男子
もうプロだろ!!
皇成
皇成
えーそう?ありがとー。
沙彩
沙彩
皇成!めっちゃかっこよかった!!
皇成
皇成
ほんと?やった!
蓮
……
皇成
皇成
あ、黒川さん!どうだった?
蓮
かっこよかったよー!ホントに沙彩ちゃんのこと大好きだね!!
皇成
皇成
うん!わかっちゃう?
蓮
バレバレだよー!
皇成
皇成
(よかった。バレてないみたいだ。…けど…)
蓮
あ、私飲み物とってくるね!
タッ
____________
蓮
(…なんであんなに苦しそうな顔をしていたの?だって、こーくんには沙彩ちゃんがいる。なのにどうして?まるで、誰にも言えない想いを抱えているみたいに…)
部屋を出た蓮は、ふらふらとしていて今にも転びそうだ。そんな蓮に、不穏な影が近づく。
男A
あれー?君、こんな時間に1人でふらふらしてどうしたの?
男B
てか君、可愛いね。なんて名前?
蓮
えっ…と…
男B
まあいいや。そんなに暗い顔して、彼氏にフラれでもしたの?
男A
俺らが慰めてあげるよ。部屋来ない?
蓮
…大丈夫です。行きません。
男A
大丈夫って何が?
男が腕を掴む。蓮が振りほどけるような力では到底なかった。
蓮
っ!!
男B
いーから、行こうよ。
抵抗したが何の効果もなく、無理矢理引っ張られていく。
蓮
(やだ…助けて…)
ギュッと目を閉じて、呼んだ。
蓮
こーくん!!
ドカッ
???
やっと呼んでくれた。
さっきまで部屋で響いていたのと同じ声に、そっと目をひらく。
男A
痛って!!
男A
何だよお前!!
皇成
皇成
あんたらこそ何なんだよ。男2人で年下の女の子囲むとか。ダッサ。
男B
あぁ!?何だとテメェ!
ゴッ
男B
うっ!!…
皇成
皇成
まだやる?それとも死ぬほど謝ってから帰る?
男A
もういいっす。すいませんでした!
男B
チッ。
男たちは走って逃げていった。
皇成
皇成
はぁ…
蓮
あ、ありがと。
皇成
皇成
こんなとこで何してんの?ドリンク反対側だし。
蓮
別に…
ガバッ

視界が白でいっぱいになる。
蓮
へっ?
皇成に抱きしめられている。
皇成
皇成
…いい加減にしてよ。なんでそんなに危機感ないの?こんっなに可愛いんだから、狙われて当たり前じゃん。ちゃんと自覚してよ。
蓮
え…///
皇成
皇成
もう、、なんか暗い顔で出ていって10分以上戻ってこないし。心配で探してみたら男2人に捕まってるし。めっちゃ焦った…。
蓮
ごめん…
皇成
皇成
俺の方こそごめん。目の前で人殴るとか、怖かったよね。
蓮
ううん、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう。
抱きしめる力が強くなる
皇成
皇成
んん…
蓮
あ、あのね。こんな時に言うのもなんなんだけど…
皇成
皇成
ん?
2人は一度離れ、人の通らない階段に座る。
蓮
先輩と、別れたんだ
皇成
皇成
………え?
蓮
一応フラれたって事になるんだろうけど、傷つくとか全然なかったんだよね。
また抱きしめられる。次は、優しく抱き寄せられるという感じだ。
皇成
皇成
れーちゃんさぁ、このタイミングで言う?
蓮
え?

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