第12話

みえない
52
2019/08/01 15:09
蓮
わ、私やっぱり待ってるよ
洸センパイ
洸センパイ
えーっ、いいじゃん。おれがいるから平気だって。
皇成
皇成
そーだよ。せっかくだし、さ。
沙彩
沙彩
ほら!いこ!!

半ば強制的にお化け屋敷へ連れて行かれる蓮の顔は、少しこわばっていた。


「4名でよろしいですか?」
洸センパイ
洸センパイ
みんなで入るのでいいよね。
沙彩
沙彩
うん!4人でお願いしまーす
「では、2人ずつのペアで前後になってお進みください。」
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ガタンッ
沙彩
沙彩
キャーーッ!!
皇成
皇成
うわぁっ
蓮
やぁっ!
洸センパイ
洸センパイ
っ!!
4人でくっついてわたわたと進んでいく。自分の横にいるのが誰かなんて、もうわからない。
お化け
うがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
???
やぁぁぁぁぁぁっ!!!
ダッ
皇成
皇成
わぁぁっ!?
誰かが皇成を引っ張って、そのまま走っていく。
残された2人は気づかず、出口へと向かってしまう。


________________________



沙彩
沙彩
怖かったねー!
洸センパイ
洸センパイ
うんー
沙彩
沙彩
って、あれ?皇成は?
洸センパイ
洸センパイ
蓮ちゃんは?


________________________

蓮
うっ…ぐっ…
皇成
皇成
泣かないで。大丈夫だよ。1人じゃないから。
蓮
ここどこ…出口まだぁ…?
皇成
皇成
うん…もうすぐだよ
皇成
皇成
無理やり連れてきてごめんね。
座り込んでしまった蓮の頭を優しく撫でる。
蓮
うぅ〜こわいぃ〜
皇成
皇成
っ!!
皇成は思わず蓮を抱き寄せた。蓮も拒まず、落ち着くまでそのままでいた。
蓮
…ありがと。ごめん。
皇成
皇成
ううん、俺の方こそごめんね。歩けそう?
蓮
うん。大丈夫。


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沙彩
沙彩
あ!きた!よかったー!!
皇成
皇成
ごめんごめん。迷っちゃって。
洸センパイ
洸センパイ
蓮ちゃんごめんね?大丈夫だった?
蓮
うん。平気だよ。

ドッ…ドッ…
言葉とは裏腹に、2人の中には心臓の音が大きく響いていた。
____________




沙彩
沙彩
楽しかったねー!
皇成
皇成
うん。また来たいね。
洸センパイ
洸センパイ
もうそろそろ帰ろっか。
皇成
皇成
はい。
洸センパイ
洸センパイ
おれ、蓮ちゃん送ってくから。
皇成
皇成
あ、俺も沙彩送るんで、乗る電車違いますよね。
蓮
じゃあ、ここでバイバイだね。
沙彩
沙彩
だねー。
皇成
皇成
あはは。なに寂しがってんの。明日学校でしょ。
沙彩
沙彩
そーだけどー
洸センパイ
洸センパイ
はーい、では解散!
蓮
ばいばい
沙彩
沙彩
ばいばーい!
皇成
皇成
じゃねー

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沙彩と皇成は薄暗いなかを歩く。2人はずっと笑っていた。
沙彩
沙彩
ここで大丈夫だよ。ありがと。
皇成
皇成
そっか。
沙彩
沙彩
…あのさ。
皇成
皇成
ん?
沙彩
沙彩
お化け屋敷…ほんとに大丈夫だった?
皇成
皇成
ん?…あー。黒川さんと、ってこと?
沙彩
沙彩
……うん。
皇成
皇成
大丈夫。何にもないよ。
優しく、包みこむように抱きしめる
沙彩
沙彩
皇成、カッコいいし、皆に優しいから不安になる。蓮ちゃんともすごい楽しそうに話すし。
皇成
皇成
うん…ごめんね。
沙彩
沙彩
皇成。大好きだよ?
皇成
皇成
ありがとう。俺も、沙彩のことが大好きだよ。
                                                       ズキッ
沙彩
沙彩
ふふっ。ばいばい。
皇成
皇成
明日、学校でね。
                                                       ズキッ
皇成
皇成
(そうだ。俺には、もう沙彩しかみえないんだ。他の誰か、なんてあり得ないんだ。)

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