第3話

帰り道①
68
2019/07/17 15:09
キーンコーンカーンコーン

入学式も終わった放課後
大輝
大輝
こーせー!かえろー!
皇成
皇成
ごめん。俺、今日委員会あるからさ。沙彩と一緒に先帰ってて。
沙彩
沙彩
わかった。ほら、行くよー
大輝
大輝
いて!さぁちゃん痛いよ!耳!!
こーせー!じゃーね!!
皇成
皇成
うん、明日ね。
蓮
………
皇成
皇成
あっ、待たせちゃってごめんね。行こっか。
蓮はうなずくだけだった。それを見た皇成は、少し寂しそうに歩き出した。



委員長
委員長
それじゃあ、委員長はオレ。他の役職もホワイトボードのとおりでいいな。以上、終了!
外はもう暗い。気をつけて帰れよ!
委員長の言う通り、外はもう真っ暗だ。昼間は暖かいとはいえ、所詮は4月ということか。
蓮
秦羽くん、それじゃあまた明日ね。
皇成
皇成
えっ、待って!危ないし、途中まででも一緒に帰ろうよ。嫌ならいいんだけど、、
あっあと、話したいこともあるし。
蓮
心配してくれてありがとう。いいよ、一緒に帰ろう。わたし最寄り駅、戸坂だけど。
皇成
皇成
やった!…って、俺も戸坂だよ?
蓮
!?…すごい偶然だね
皇成
皇成
ね!じゃあ帰ろっか!
申し訳程度の街灯しかなく、通学路としては少々心許ない道を駅に向けて歩く。
なにから話そうか迷っているのか、極度に緊張しているのか、皇成は落ち着きがない。それとは対照的にただ下を見つめて歩く蓮。コツコツという乾いた音が、不思議に大きく響く。


そのまま電車に乗り込み、無言が続いた。
「まもなく、とさかー、とさかー
お出口は左側です」
アナウンスの音に、皇成はビクッと反応した。
そして焦り始めた。


改札を出て、少し先を歩く蓮に向かって、やっと口を開いた。
皇成
皇成
あのさ!!ひとつ…話したい事があるんだ。
聞いてもらっても、いいかな?
蓮
彼女はパッと振り返る


苦しい。水の中にいるみたいだ。そう思った。皇成がこんなに緊張するのは初めてだった。いや、ひょっとすると怖いのかもしれない。

もし自分の勘違いだったら。


忘れられていたら。


気持ち悪がられてしまったら。



人気者で、いつも周りに人がいる皇成にとって、こんな感覚は初めてなのは当たり前だった。こんなこと、考えたこともなかったのだから。

蓮
…いいよ。
皇成
皇成
ありがとう。
ホッとしたのか、強張っていた顔がほんの少し緩んだ。
だが、なんど深呼吸しても苦しいままだった。それでも覚悟を決めたのか、皇成はゆっくりと話し始めた。
皇成
皇成
…おれんちね、つい2ヶ月ぐらい前まで、母子家庭だったんだ。
それはまるで、あの頃を懐かしむような。思い出を噛みしめるような、穏やかであたたかい、優しい声だった。

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