……え?
俺の思考は停止した。
たった7文字の理解に時間がかかった。
その言葉を理解したとき、いむくんといむくんに抱えられたまろが入ってきた。
俺がソファーの上を素早く片付け、抱えた2人がまろを寝かせた。
俺はないちゃんを呼びに2階へ上がった。
そして、あの時と同じように、
慌てて部屋のドアを開けた。
ないちゃんの肩が跳ね上がって、なにかに布団を被せたように見えた。
布団の下になにがあるのか気になるが、正直今はそれどころではない。
俺の一言ですぐに何かを察したらしく、ないちゃんは慌てて部屋を出た。
俺もそれに続いて1階へ戻った。
まろはまだ意識を取り戻してはいなかった。
いむくんはこの家に戻って少し安心したのか、目に涙を浮かべていた。
確かにまろは起きていた。
だが、様子がおかしかった。
見た目にもなにが違和感がある。
ないちゃんがそう呟いた途端、俺はその違和感に気づいた。
目が赤い。
それに気づいたのと同時に、まろが動いていた。
テーブルの上の何かを手に取り、次の瞬間には悠くんの目の前で右手を振り上げていた。
その右手が掴んでるものが何かを理解した瞬間、それはスローモーションに見えた。
まろの青い手がカッターを振り下ろした。
その先端は真っ直ぐ悠くんに向かっていた。
俺は反射的に目を瞑った。
悠くんの声にならない声と、まろの唸り声が聞こえたのはその直後だった。
俺は恐る恐る目を開けた。
悠くんの左足には出血が見られた。
多分、まろのカッターによって傷つけられた傷だろう。
まろはカッターを持った右腕を左腕で抑えていた。
そのままカッターを落とし、頭を抱えてふらついた。
叫んだのは俺だった。
というか、1番冷静だったのが俺だった。
その言葉にすぐに反応を示したのはないちゃんだった。
ないちゃんはまろの足元に落ちていたカッターを蹴り、まろを無理やり座らせた。
まろはそんなないちゃんの腕を掴んで引き離そうとしたが、俺の加勢によってそれは止められた。
まろはまだ動こうとした。
全然落ち着かない。
ないちゃんが言った。
いむくんは慌てて階段を駆け上がった。
約1分くらいで注射針と液体の入った瓶を持ってきた。
それをないちゃんに手渡した。
ないちゃんといむくんが交代し、ないちゃんは注射針に液体を入れた。
そのまままろに刺した。
ないちゃんが徐々に薬を入れていく。
それと共に少しずつまろの抵抗力が弱くなっていき、最終的に気絶した。
俺の方に倒れ込んできたのを支え、再度ソファーに寝かせた。
まろが動かないのを確認して伝える。
ホッとしたのも刹那、俺たちはぴよにきへ視線を移した。
りうらはテキパキ応急処置をしていた。
手袋をはめ、白いガーゼのようなもので傷口を押さえていた。
あにきは必死で痛みに耐えていた。
りうらは俺たちがまろの対応を終えたことに気づくと、俺たちに指示を出し始めた。
俺たちはりうらの指示通りに動き、応急処置を済ませた。
そして、ないちゃんのスマホでお医者さんに電話をかけた。
ないちゃんは実際に起きたことを口に出したせいで感情が爆発したのか、泣きながら状況を伝え始めた。
電話を切った。
俺たちはまろを部屋へ運び、お医者さんの到着を待った。
目の色が変わっていたということは瞳遷病……
でも、なんで悠くんを刺そうとしたんだろう。
まろは前にも1度倒れている。
悠くんの傷は大丈夫だろうか。
玄関のチャイムが鳴った。
ないちゃんが出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。