第23話

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2022/12/14 05:00
気まずい空気を断つため、俺はまろの部屋を出た。

ドアを締めた途端、緊張していた糸が緩んだようにその場に崩れ落ちた。

「普通じゃない」

まろの言葉が俺の頭で反響していた。

でも、まろは俺と同じで2つの奇病に……。

……同じ?

俺は……生まれたときからずっと苦しんできたのに……最近奇病にかかった人と同じ?

その分今苦しんでる。

一緒にするな。

まろのは命に関わる。

まろはすぐ死ぬけど俺は一生かかえなくちゃいけない。

誰かを殺すかもしれないって怯えながら生きるよりはまし。

ずっと普通じゃない自分を認められなかった。

まろも今は普通じゃない。

生まれた時は普通だった。

俺の奇病は生まれつきのもの。

まろの、みんなのは生まれつきじゃない。

生まれつきは異常。

普通じゃない。

わかんない。

分かんない分かんない。


呼吸がしずらい。

周りが見えない。

何も聞こえない。


背中に何かが触れた。
ないこ
初兎ちゃん落ち着いて
手を伝って声が聞こえる。

俺はいつの間にか下げてた頭を上げてその手の主を見る。

ないちゃんの目に反射した俺の目が赤から黒に変わるのが見えた。

ないちゃんは少し顔をしかめた。

でもいつもの優しい顔に戻って俺に言った。
ないこ
疲れたでしょ?
今日はもう部屋で休憩しよう
気づけば外は真っ暗だった。
初兎
……うん
ありがと
俺は短く返事をして自分の部屋に入った。

俺はベッドに腰掛けた。

今日の出来事を頭の中で振り返る。

朝はりうらの奇病の治し方について。

まろが倒れたと言って帰ってくる。

ないちゃんを呼びに行く。

そういえばあの時隠してたやつはなんだったんだろ。

まろが起きたと思ったら悠くんを刺そうとする。

でもまろが一瞬自我を取り戻したおかげでカッターは足を傷つけた。

そのまままろを眠らせて部屋へ、そして悠くんの応急処置。

ないちゃんがお医者さんを呼んで、まろを呼ぶ。

殺人病を聞かされる。

まろに呼ばれる。

まろと話す。

……あの時ドアのところにいたのは誰だ。

その後は……。

俺は疲れた頭で考える。

まず、りうら。

なんでりうらはこのタイミングで俺にこのことを話したのか。

言うタイミングなら他にもあったはずだ。

そして、まろ。

もしあれが本当にまろの本心なら、まろの指宝病はもう治ってる。

気持ちを伝えられたことになって治療法を満たすはずだ。

でも、治ってない。

あれは……まろの本当の本心ではないってこと。


俺は頭痛を感じ、考えるのをやめて眠りについた。

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