気まずい空気を断つため、俺はまろの部屋を出た。
ドアを締めた途端、緊張していた糸が緩んだようにその場に崩れ落ちた。
「普通じゃない」
まろの言葉が俺の頭で反響していた。
でも、まろは俺と同じで2つの奇病に……。
……同じ?
俺は……生まれたときからずっと苦しんできたのに……最近奇病にかかった人と同じ?
その分今苦しんでる。
一緒にするな。
まろのは命に関わる。
まろはすぐ死ぬけど俺は一生かかえなくちゃいけない。
誰かを殺すかもしれないって怯えながら生きるよりはまし。
ずっと普通じゃない自分を認められなかった。
まろも今は普通じゃない。
生まれた時は普通だった。
俺の奇病は生まれつきのもの。
まろの、みんなのは生まれつきじゃない。
生まれつきは異常。
普通じゃない。
わかんない。
分かんない分かんない。
呼吸がしずらい。
周りが見えない。
何も聞こえない。
背中に何かが触れた。
手を伝って声が聞こえる。
俺はいつの間にか下げてた頭を上げてその手の主を見る。
ないちゃんの目に反射した俺の目が赤から黒に変わるのが見えた。
ないちゃんは少し顔をしかめた。
でもいつもの優しい顔に戻って俺に言った。
気づけば外は真っ暗だった。
俺は短く返事をして自分の部屋に入った。
俺はベッドに腰掛けた。
今日の出来事を頭の中で振り返る。
朝はりうらの奇病の治し方について。
まろが倒れたと言って帰ってくる。
ないちゃんを呼びに行く。
そういえばあの時隠してたやつはなんだったんだろ。
まろが起きたと思ったら悠くんを刺そうとする。
でもまろが一瞬自我を取り戻したおかげでカッターは足を傷つけた。
そのまままろを眠らせて部屋へ、そして悠くんの応急処置。
ないちゃんがお医者さんを呼んで、まろを呼ぶ。
殺人病を聞かされる。
まろに呼ばれる。
まろと話す。
……あの時ドアのところにいたのは誰だ。
その後は……。
俺は疲れた頭で考える。
まず、りうら。
なんでりうらはこのタイミングで俺にこのことを話したのか。
言うタイミングなら他にもあったはずだ。
そして、まろ。
もしあれが本当にまろの本心なら、まろの指宝病はもう治ってる。
気持ちを伝えられたことになって治療法を満たすはずだ。
でも、治ってない。
あれは……まろの本当の本心ではないってこと。
俺は頭痛を感じ、考えるのをやめて眠りについた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。