誰もいない放課後の教室
今日は、どの部活も休養日
だからみんな早く帰る。
俺だって、やりたくてしてるわけじゃない
しょうがないだろ、当番なんだから!
しかも、先週は駿介の居残りのために30分も待ってあげたのに……こいつはそんな俺に対して10分も待てないのか?
くっそ……
駿介はサッカー部で友達いっぱいいるわけだし……俺は何故かこいつと仲良くなってるわけだけど、他に友達と呼べる程の仲の人はいない。
そう言われれば、何とも答えられないのだ。
こいつ、その事分かってて聞いてやがる。
え……?
びっくりした……って
あ、駿介のやつ……話そらしたな?
え?
多分今、俺はものすごく間抜けな顔をしてるであろう。
開いた口が塞がらない。
は?
いや、何言ってんだ、俺……
友達じゃない……?
松川の気持ち!考えろ!
前言撤回!
ほら、落ち込んでる……
ん……?
松川が俺と友達じゃなかったということについて落ち込んでるのか?
逆じゃなくて?
何だこの状況……
そうだ、駿介!
駿介は……
俺は教室を見回す……が、いない。
逃げたのか?
そう言うが早いか、松川はロッカーからほうきを取り出して、床を掃き始めた。
俺が「ごめん」と言うのを遮るように松川が言った。
俺にとっての友達?
そんなこと考えたこともなかったし、そんなこと聞かれるとも思ってなかった。
松川……まだそのことを……?
あ……
「女子はね、色々と引きずっちゃうのよ」
そう近所のお姉さんが言ってたのを思い出す。
こういうときは何といえばいいのか……
ダメではないけど……
何といえばいいんだ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。