そう元気に挨拶をするのは、同じクラスの江藤 亜梨沙
そして、その横ではにかんだような笑顔を見せるのは
松川 佑奈
彼女は……なにか僕と同じ匂いがする気がした。
危ねぇ……
松川は何か他の人とは違って見えて
いつも考え事をしている間にずっと見てしまっているみたい。
可愛い……
ん?
可愛い!?
今、俺……松川のことを可愛いって思ったのか!?
確かに松川はモテて可愛いとは言われてるけど……
松川は
「だよねっ?」
と俺の顔を覗き込む。
そう言うと、江藤は人形を操るように俺をくるっと手で回し、小さい声で話しかけてきた。
な、なわけ……って何で俺は否定できないんだ?
口がポカーンと開いたまま動かせない。
だ、だって……
あんなに顔が整ってたら告白とか何回もされたことあるに決まってるだろうし
性格もいいし、みんなに好かれてる。
ほら、この前だってイケメンのサッカー部の副キャプテンに告白されたって噂があったし?
てか、今……俺、松川を好きって認めたことになってる?
自然な笑顔……ねぇ。
まあ、一番松川といる江藤が言うなら……
少しは信じてみてもいいのかもしれない。
あぁぁ!
やっぱり、江藤はダメだ……
口が軽すぎる。
ん?
お世辞でも嬉しい?
……えっ?
え……
これって脈アリ?
なわけないか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。