チハヤside
暫く2人での生活が続きそれは日常になっていく。
そんな日常の中で最初の日に抱いた可愛いという気持ちは日に日に増していき、嫌でも自分の好意を知った
そうすれば段々と欲も溜まっていくわけで、寝顔を見る度襲いたい衝動に駆られる。
この関係を崩したくはない。でもこの気持ちを無視し続けるのも無理だ
…そうだ。買えばいいんだ。
俺が拾う前のフレントにとっては金を払った人に体を売るのが普通だったんだし、その行為に感情は無い
考えると少しチクリと胸は痛んだけど、他意はないただの欲望の消化として頼めばこの生活は続けたまま受け入れてくれると思った
予想と裏腹に、俺の依頼はあっさりと拒否されてしまった。
初めて会った日は金の代わりに俺に抱かれようとしていた。
つまり知らない人にあっさり股を開く奴なのに、それでも今の俺に抱かれたくないと言った
嫌だの一言が胸に重く刺さって、俺は何も言えなくなってしまった
フレントside
初めて善意だけで接してくれるチハヤがずっと好きだった。
家政婦という名目だけど、料理も普通に出来るチハヤにとってそれは大したものじゃない
何もしなくても自分の存在を受け入れてくれる安心感があった
意味もなく置かせてくれてるから、もしかしたら同じ気持ちなんじゃないかって期待してしまった。
ノーマルの人が同性愛者になるなんてそんなハズないって分かってたのに
金を貰って体を差し出すなんて今まで散々やってきたから、今回も同じ様にすればいいだけ。
助けて貰ってばっかだからチハヤからの"依頼"なら受けないといけない
それなのに口から出た言葉は本音だった
チハヤにだけはこんなお金なんて払って貰いたくなかった。
抱かれるなら、愛の籠ったものが欲しかった。
叶わないって分かってるのに、ただ金だけの関係でチハヤに抱かれるなんてきっと俺には耐えられない
チハヤはそれ以上何も言ってこなかった。
あぁ、捨てられるのかな。そりゃあそうだよな…好きでもないのに依頼すら受けない使えない俺を置く意味は無い
…出ていきたくなかったなぁ。
そう思うとじわじわと視界が歪んできて、喉が腫れ上がったように息がしにくくなった。
このまま情けなく声を上げて泣いてしまったらきっと優しいチハヤに迷惑をかけてしまう
醜い俺は、応えをはっきり聞くほどの勇気はない癖にそれでもチハヤの記憶に残っていたくて
自分の気持ちを伝えた後
チハヤの前から逃げる様に立ち去った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。