第20話

永井花①
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2026/07/03 09:00 更新
夕闇高校の放課後には、15分間の掃除時間がある。

それぞれ担当している持ち場につき、高1の永井ながいはなこと私も仲良しの友達と一緒に中庭の掃除をしていた。

生徒たちのいこいの場所になっている中庭はそこそこの広さがあって、緑豊かな芝生や植栽しょくさいエリアの花壇、それから休憩できるベンチなどがある。

掃除はグループごとに役割が分かれていて、私はせっせと雑草を抜いていた。
友達
花―、そろそろ戻るよ?
花
わわ、あともう少しだけ待って~!
雑草なんて抜いてもキリがないことはわかっていても、見つけてしまうとやらずにはいられない。

友達も私の性格をわかってくれているので、無理に終わらせようとはしないで遠巻きに見守ってくれていた。

自分で勝手に『ここまで!』と決めていた範囲が綺麗になり、ようやく切り上げようとした時──。
花
ん? なんだろう……?
植え込みの下に、きらりと光る〝なにか〟を見つけた。

手を伸ばして確認してみると、それは金色に輝くブレスレットだった。
花
わあ、綺麗……
ブレスレットには、ふたつの矢印がクロスしているようなデザインのチャームが付いていた。

今までおしゃれに無頓着むとんちゃくだったけれど、もう高校生だし、そろそろ私もこういうブレスレットがほしいと思っていたところだった。
花
本当に綺麗だな。どこで売ってるんだろう?
一目惚れしてしまった私は、ブレスレットをうっとりと眺めた。

中庭に落ちていたってことは生徒の落とし物か、先生の私物という可能性もある。

学校内で見つけた落とし物は職員室に届けなければいけない決まりになっているけれど、どうしてもこのブレスレットを着けてみたいという気持ちになった。
花
人のものを勝手に着けちゃダメだよね……でも、ほんのちょっとだけなら
欲望に負けてしまった私は、ブレスレットを右腕に着けた。
黒猫
黒猫
にゃ~~ん!
花
え、わ……っ!
その時、植え込みの奥から黒猫が飛び出してきた。

避けきれなかった私は、そのまま猫とぶつかってしまい、思わずしりもちをついた。
花
いてて……ハッ! 猫ちゃん、大丈夫!?
自分のことより猫が怪我をしていないか心配になったが、どういうわけか自分の視線が低い。

なにか近くに大きなものがある気配がして顔を上げると……。

なぜか、そこには『私』が立っていた。

まん丸の目をしている『私』は颯爽と走り出して、どこかに行ってしまった。

追いかける暇もなく、私はぽかんとする。

ま、まさか……。

自分の体を確認すると、艶やかな毛並みと細い足。後ろでなにかが揺れていると思えば、長いしっぽがついていた。
花
にゃ、にゃー!?
(ね、猫ー!?)
校舎の窓ガラスに反射して映っている自分は、先ほどぶつかった黒猫の姿をしていた。
花
(つまり、猫ちゃんと体が入れ替わっちゃったってこと……?)
夢かもしれないと思い、ほっぺたをつねろうとしても猫の手ではつねれない。

なんで猫ちゃんと体が入れ替わってしまったのかは、わからない。

元に戻るには、どうしたらいいのか。

猫になっている『私』は、どこに行ってしまったのか。

制服のまま高い場所に登ったり、足を上げて毛づくろいをしていたら……。想像しただけで血の気が引いた。
花
にゃ、にゃにゃにゃーん……!
(だ、誰かに見られる前に探さないと……!)

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