学校からの帰り道。私はひとりで夕焼けに染まった道を歩いていた。
幸乃がどうなったのか、なんてわざわざ考える必要はない。
名前を呼ばれて振り向くと、そこには幸乃のお母さんが立っていた。
どこかに行ってきた帰りなのか、その腕には大きな荷物が提げられていた。
私は気まずさに耐えきれずに、目を逸らしてしまった。
まさか私のせいで娘が消えてしまったなんて、幸乃のお母さんは想像すらしてないだろう。
いつもとは違う私の様子に気づいたのか、今度は幸乃のお母さんのほうが気まずそうな顔をした。
幸乃のお母さんが、幸乃の味方をするのは当たり前だ。
でも、どんな理由があったとしても、もう私には関係ない。
幸乃を突き放す態度が表情から伝わってしまったのか、お母さんは困ったように眉を下げた。
思考が追いつかない。なにがなんだかわからない。
幸乃のお母さんの声が、やけに遠くに聞こえた。
幸乃は、いつだって私のために泣いてくれた。守ってくれた。
親友をやめると言ったのも、私のためだった。
慌てて消しゴム手帳に書き込んだ幸乃の名前を消そうとしたが、擦っても擦っても消えてくれない。
彼女の入院先を聞いた私は、その場所へと走った。
息を切らせてようやく病院にたどり着き、幸乃の病室がある三階に向かった。
勢いよく扉を開けたが、そこには空っぽのベッドが置いてあるだけだった。
ふらふらとベッドに近づいて手を当てると、まだほんのりと温かく、さっきまで幸乃がいたことがわかった。
消しゴム手帳に書き込んだことで、幸乃はこの世界から消えてしまった。
どんなに謝っても、どんなに戻ってきてと願っても、幸乃はもうどこにもいない。
私が幸乃を信じられなかったせいで、取り返しのつかないことをしてしまった。
うわ言のように名前を呼び続ける中、ポケットからなにかが落ちた。
それは、密ちゃんからもらった消しゴム手帳だった。
【稲森 幸乃】と書かれたページを見つめ、私はビリビリに破いた。
なんでも消せる消しゴム手帳。
だけどページを破り捨てたとしても、私の罪も消えることはない。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。