突然、誰かに体を持ち上げられた。そのまま優しく抱き抱えられた私は、ボブヘアの女の子と目が合った。
きょとんとしている女の子の顔に見覚えはないから、たぶん同級生ではない。それなら上級生かと思ったけれど、なぜかその子は夕闇高校の昔の制服を着ていた。
どうやら私の声は、鳴き声にしか聞こえないらしい。
女の子は猫になった私を抱っこしたまま、校舎の中に入った。
渡り廊下を進み、生徒の出入りがない旧校舎へと足を踏み入れる。
ひたすら長い廊下を進み、女の子が足を止めたのは……。
ひとつだけ不気味に置かれたロッカーの前だった。
呪文のような言葉を唱えた女の子がロッカーを開けると、地下に続く階段が現れた。
女の子はその階段を慣れたように下りていく。
旧校舎、ロッカー、そして、誰も知らない地下まで続く階段。
頭の片隅では、みんなが噂していたユーレイの話を思い出していた。
――困っている生徒に特別なアイテムをくれる密ちゃん。
正直、おばけは大の苦手で、密ちゃんの噂もなるべく耳に入れないようにしていた。
密ちゃんは一息つくように、真ん中の椅子に腰を下ろした。
私たちがいつも使っている教室よりも少しだけ古さがある部屋には、地下だから窓がない。
ロッカーの奥に隠された、秘密の教室。
密ちゃんは少し眠たげな顔で、机に顔を伏せた。その姿はユーレイとは思えないほど普通の女の子に見える。
そう呟くとすぐに、密ちゃんは静かに眠りに落ちた。
その瞳にこぼれた涙を拭おうと手を伸ばした次の瞬間――。
ビリリリッ! 青白い光が私の中へと流れ込む。
まるで走馬灯のように、次々と見える〝なにか〟















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。