第21話

永井花②
1,032
2026/07/10 09:00 更新
密ちゃん
密ちゃん
もうヒソカちゃん、こんなところにいたんだね
花
にゃにゃっ……!
(わわっ……)
突然、誰かに体を持ち上げられた。そのまま優しく抱き抱えられた私は、ボブヘアの女の子と目が合った。
密ちゃん
密ちゃん
そんなに、まじまじと見ちゃってどうしたの?
きょとんとしている女の子の顔に見覚えはないから、たぶん同級生ではない。それなら上級生かと思ったけれど、なぜかその子は夕闇高校の昔の制服を着ていた。
花
にゃ、にゃにゃにゃ
(あ、あの、私は永井花という名前で)
花
にゃにゃにゃーん!
(なぜか猫ちゃんと体が入れ替わってしまって!)
密ちゃん
密ちゃん
はは、今日のヒソカちゃんはよく鳴いて元気だにゃ~!
花
にゃにゃんっ
(そ、そうじゃなくてっ)
密ちゃん
密ちゃん
ひょっとしてお腹がすいたのかな?
じゃあ、早くいつもの場所にいこ♪︎
どうやら私の声は、鳴き声にしか聞こえないらしい。
女の子は猫になった私を抱っこしたまま、校舎の中に入った。

渡り廊下を進み、生徒の出入りがない旧校舎へと足を踏み入れる。

ひたすら長い廊下を進み、女の子が足を止めたのは……。
花
(こ、これは……)
ひとつだけ不気味に置かれたロッカーの前だった。
密ちゃん
密ちゃん
εδɤζφεδɤζφεδɤ
呪文のような言葉を唱えた女の子がロッカーを開けると、地下に続く階段が現れた。

女の子はその階段を慣れたように下りていく。

旧校舎、ロッカー、そして、誰も知らない地下まで続く階段。

頭の片隅では、みんなが噂していたユーレイの話を思い出していた。

――困っている生徒に特別なアイテムをくれる密ちゃん。
花
(そういえばさっき、猫ちゃんのことをヒソカちゃんって呼んでいた気が……)
正直、おばけは大の苦手で、密ちゃんの噂もなるべく耳に入れないようにしていた。
花
(でも、今さら逃げられないし、どうしよう)
密ちゃん
密ちゃん
ヒソカちゃん。今日は誰も選ばないつもりだから、たまにはゆっくりしよう
密ちゃんは一息つくように、真ん中の椅子に腰を下ろした。

私たちがいつも使っている教室よりも少しだけ古さがある部屋には、地下だから窓がない。

ロッカーの奥に隠された、秘密の教室。
花
(もしかして、アイテムが欲しい生徒はここに導かれるんだろうか……)
密ちゃん
密ちゃん
ねえ、ヒソカちゃんと出会ってどのくらい経ったっけ?
密ちゃんは少し眠たげな顔で、机に顔を伏せた。その姿はユーレイとは思えないほど普通の女の子に見える。
密ちゃん
密ちゃん
ヒソカちゃんは、私から離れていかない?
花
にゃにゃ……
(えっと……)
密ちゃん
密ちゃん
もう昔のことなのに、今でも怖いんだ
花
……………
密ちゃん
密ちゃん
生きていた頃の私は終わったけど、密ちゃんとして私の人生はまだ続いている
密ちゃん
密ちゃん
夕闇高校のユーレイである私の終わりがあるとしたら、それは一体いつなんだろうね?
そう呟くとすぐに、密ちゃんは静かに眠りに落ちた。

その瞳にこぼれた涙をぬぐおうと手を伸ばした次の瞬間――。

ビリリリッ! 青白い光が私の中へと流れ込む。

まるで走馬灯のように、次々と見える〝なにか〟

花
(ひょっとしてこれは、密ちゃんの記憶?)

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