第17話

吉田まおみ④
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2026/06/12 09:00 更新

密ちゃんからアイテムをもらって1週間。

今日も授業が終わった放課後、私は陸上部のグラウンドにいた。

普段なら自分の練習に没頭しているところだけど、ここ最近は心にゆとりができたおかげで、聖奈に対して技術面のアドバイスをする回数も増えていた。
まおみ
まおみ
聖奈は中盤で減速しがちだから気をつけて
まおみ
まおみ
たぶん脚だけが前に出すぎてて、腰が落ちてるのが原因だと思う
まおみ
まおみ
そこを直せばもっと速く走れると思うよ
聖奈
聖奈
本当に? じゃあ、アドバイスを意識してもう一度走ってみてもいい?
まおみ
まおみ
もちろん!
私はにっこりと笑い、聖奈の練習風景を見守った。

そのあと、10分間の休憩に入ると、私たちは並んで水筒の水を飲みながら一息ついた。
聖奈
聖奈
まおみ、ごめんね。私の練習ばっかりに付き合ってもらっちゃって
聖奈の走りは日増しに良くなっていて、タイムも驚くほど上がっている。

もしも密ちゃんからのアイテムがなければ、きっと私はまたひとりで焦っていただろうけど、今はとても穏やかだ。
まおみ
まおみ
謝らなくていいよ。聖奈が楽しく走れるのなら、それだけで私は嬉しいからさ
聖奈
聖奈
うう、まおみ~っ
まおみ
まおみ
休憩が終わったら、また練習ね。言っとくけど、私はスパルタだから覚悟して
聖奈
聖奈
うん!
明るい返事をした聖奈は、スパイクの裏についているピンを調整しはじめた。

彼女が履いているスパイクを見て、私は口角を上げる。

いつもと同じに見える蛍光色のスパイクは、密ちゃんからもらった〈ブースターシューズ〉だ。

私はアイテムを自分では使わずに、こっそりと聖奈のスパイクと入れ替えていた。

走れば走るほど足に負担がかかる〈ブースターシューズ〉。

そのデメリットを聞いた瞬間、私は迷わず聖奈に使わせようと思った。

聖奈のことは友達だけど、正直思うことはたくさんあった。

私のことを過剰に褒めてくるところも正直ありがた迷惑だったし、なによりなんでも無邪気に真似してくるところが本当に嫌だった。

今までは我慢してきたけれど、私の走り方まで徹底的に真似をされ、聖奈が得意気な顔をしていることだけは許せなかった。

だから、私はもう手段は選ばない。

聖奈にたくさん走らせれば、いずれアイテムの副作用が出てくる。
まおみ
まおみ
(私の真似ばっかりする聖奈が悪いんだ!)
そして大会が二週間後に迫ったある日のこと。

聖奈は練習中、足に強い痛みを覚え、病院で精密検査を受けることになった。

医師の診断では、アキレス腱に炎症があり、全治二週間とのことだった。

きっと〈ブースターシューズ〉の影響だろう。
聖奈
聖奈
大会があるのに、もし出られなかったら……
いつもは笑顔を絶やさない聖奈もさすがに顔を曇らせて落ち込んでいた。

仮に大会に出場できたとしても、二週間も休めば、本来のパフォーマンスを発揮するのは難しい。

それでも聖奈の負けん気は私と同じくらいあるから、きっと無理をしてでも大会に出ることはわかっている。

でも、それでいい。

聖奈が頑張れば頑張るほど足へのダメージはさらに進行して、治るどころか悪化する一方だ。
まおみ
まおみ
聖奈なら大丈夫だよ。
だから一緒に頑張ろうね!
私は悪魔の微笑みを浮かべて、聖奈の肩に手を置いた。

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