第11話

西村友紀④
755
2026/05/01 09:00 更新
密ちゃんについて調べると、旧校舎のロッカーに行けば会えるということがわかった。

俺は他の人に見つからないよう、放課後にロッカーを探しにいった。
友紀
友紀
あれ、これじゃない……?
俺は空き教室のロッカーを開けて首をかしげた。

備品置き場になっている旧校舎には、生徒が使っていたであろうロッカーや掃除用具入れがいくつも残されている。

どのロッカーを開ければ密ちゃんに会えるのか、肝心なところまでは調べなかった。
黒猫
黒猫
にゃーん
友紀
友紀
わっ……!
黒いなにかが動いていると思ったら、足元に一匹の猫がいた。

こんなところにいるなんて、おそらく野良猫だろうけど、毛並みは誰かにいつも撫でられているみたいにつやつやしていた。
友紀
友紀
お前、こんなところでなにしてんだよ?
黒猫
黒猫
にゃー
友紀
友紀
撫でても怒んない?
黒猫
黒猫
にゃーにゃー
おそるおそる手を近づけると、黒猫は頭を突き出して撫でさせてくれた。
友紀
友紀
俺、密ちゃんっていうユーレイを捜してるんだけど、どこにいるか知らない?
黒猫
黒猫
…………
友紀
友紀
知らないよな……
今日は諦めて帰ろうと思っていると、黒猫が突然歩き出した。
黒猫
黒猫
にゃんっ!
まるで付いてこいと言っているように、黒猫は時折振り返りながら進んでいく。

そして古びた廊下の突き当たりには、淡い夕日色に染まっているロッカーがあった。

なんのために置かれているのかわからないロッカーは、まるで誰かが来るのを待っているみたいに見える。
友紀
友紀
これが密ちゃんに会えるロッカー?
…………あ、あれ?
ここまで道案内してくれた黒猫は、いつの間にかいなくなっていた。

勇気を出してロッカーの扉を開けると、そこには地下へと続く階段があった。
友紀
友紀
……や、やった!
なんの躊躇ためらいもなく、足早に階段を降りる。

そして、開けた場所に出ると、セーラー服を着ている女の子と目が合った。
密ちゃん
密ちゃん
ようこそ、秘密の教室へ
その腕には、先ほどの黒猫が抱かれていた。
友紀
友紀
もしかして、きみが密ちゃん?
密ちゃん
密ちゃん
うん、そうだよ。本当はね、友紀くんを選ぶ予定じゃなかったんだ
友紀
友紀
えっ
密ちゃん
密ちゃん
でも、私の友達が友紀くんのことを気に入ったみたいだから
友紀
友紀
友達って、その黒猫?
密ちゃん
密ちゃん
うん。もしかして、マタタビでも持ってるのかにゃ?
友紀
友紀
マタタビは持ってないけど……あ、昼ごはんにおかかのおにぎりを食べたからその匂いが手に付いてたのかも!
密ちゃん
密ちゃん
おかか! なるほど!
これもなにかの縁だし今回は特別ってことで☆
友紀
友紀
(……特別)
その言葉に、心がおどる。

俺は元々引っ込み思案な性格で、自分から前に出るタイプじゃなかった。

だけど、中学2年生の時、クラスで流行っていた携帯用ゲーム機のソフトをいち早くクリアしたことで、一気に風向きが変わった。

みんなが俺に一目置くようになり、自然と周りに集まってくれるようになった。

嬉しいというより、快感だった。

その気持ちがいつまでも忘れられずに、みんなから注目されるにはどうすればいいか試行錯誤してきた。

でも、面白い話がいずれ飽きられることも、環境とともに相手にされなくなることも、本当はわかっていた。
友紀
友紀
俺は自分でなにかをしなくても、特別扱いされたいんだ!
密ちゃん
密ちゃん
それなら、ぴったりなアイテムがあるよ!
友紀
友紀
本当かっ!?
密ちゃん
密ちゃん
ただし、寿命と交換ね
友紀
友紀
じゅ、寿命……?
密ちゃん
密ちゃん
怖いなら止めてもいいんだよ
密ちゃん
密ちゃん
友紀くんと同じ願いの子がいたら、あげちゃうかもしれないけど
友紀
友紀
そ、それは困る!
友紀
友紀
……わ、わかった。寿命と交換でもいい!
密ちゃん
密ちゃん
交渉成立ってことで、友紀くんには〈バースデイリング〉をあげるにゃん
密ちゃんが渡してくれたのは、銀色に輝く指輪だった。

他の人には見えないらしい指輪を着けると、毎日が誕生日になるのだという。
友紀
友紀
すげえ! 俺の望んだとおりのアイテムだ!
密ちゃん
密ちゃん
でしょ~? でも、バースデイリングは一度指にはめると100日間は外れないルールがあるんだけど、大丈夫?
友紀
友紀
全然大丈夫!
友紀
友紀
(だって、それって100日間自分の誕生日が続くってことだろ?)
友紀
友紀
(100日間経って外れたら、また着け直せばいいわけだし、本当に理想のアイテムだ!)

プリ小説オーディオドラマ