第3話

藤木沙耶香②
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2026/03/06 09:00 更新
クラスメイト
ねえ、沙耶香ちゃん、またプリ交換しよ!
学校の休み時間。机に頬杖をついてぼうっとしていたら、この前と同じ子が声をかけてくれた。
沙耶香
沙耶香
あーごめん……。最近プリクラ撮ってなくて
いつも持ち歩いていたプリクラも、幸乃から絶縁されてからは家に置いたまま。

考えてみれば、友達と呼べる人はたくさんいても、放課後に遊んだりするのは幸乃だけだった。

だから、私のプリクラに写っているのも幸乃だけ。
沙耶香
沙耶香
(幸乃がいなかったら、私はひとりだ……)
クラスメイト
じゃあ、今度私と撮りに行こうよ!
沙耶香
沙耶香
え?
クラスメイト
沙耶香ちゃんともっと仲良くなりたいと思ってたんだよね!
そう言って、友達は私の隣の席に腰かけた。

親友と呼べる関係にはなれなくても、仲を深めていける関係はこれからだって築いていける。

離れていった幸乃に執着するんじゃなくて、これからのことを考えるべきだ。

なんとか頭を切り替えるために、その子と色々な話をしていると……。
クラスメイト
そういえば沙耶香ちゃんは、密ちゃんの噂を知ってる?
突然、そんなことを聞かれた。
沙耶香
沙耶香
詳しいわけじゃないけど、少しなら
クラスメイト
なんか密ちゃんってユーレイだから昔からこの学校にいるらしいの
クラスメイト
それでここだけの話なんだけど、私の従姉妹の杏美あずみお姉ちゃんも夕闇高校の卒業生で、ある日を境におかしくなっちゃったんだ……
沙耶香
沙耶香
え、おかしくって……?
クラスメイト
うまく言えないんだけど、杏美お姉ちゃんなのに杏美お姉ちゃんじゃないみたいっていうか……
人間っぽくない気がして今も怖いんだ
その異変に周りはまったく気づいていないらしく、ずっと気味悪く思っていても、口に出すことはできないそうだ。
沙耶香
沙耶香
か、勘違いってことはないの?
沙耶香
沙耶香
ほら、環境の変化とかで多少雰囲気が変わる人もいるかもしれないし
クラスメイト
たしかにね。でも勘違いじゃなかった場合、これは私の勘なんだけど、杏美お姉ちゃんは密ちゃんからなにかアイテムを貰っちゃったんじゃないかって思ってるんだよね
沙耶香
沙耶香
ア、アイテム?
クラスメイト
うん。だから、密ちゃんに会えたら杏美お姉ちゃんのことを聞いてみたいんだ
沙耶香
沙耶香
会えたらって……本当に会えるの?
クラスメイト
簡単には会えないと思う。だって、密ちゃんに会うには選ばれた人じゃないとダメだから
クラスメイト
本当に困ってる人なのか、それとも密ちゃんの好みなのかはわからないけど、会う方法だけなら知ってる
旧校舎の外れに、ぽつんと置かれたロッカー。

その扉の奥は、密ちゃんがいる秘密の教室まで繋がっているらしい。
クラスメイト
まあ、今のところ密ちゃんにすがりたいほどの悩みはないんだけどね
クラスメイト
沙耶香ちゃんは、なにか悩みとかってある?
沙耶香
沙耶香
私は………
頭に浮かんでいるのは、もちろん幸乃のことだ。

もしも本当に密ちゃんが存在していて、仮に選んでもらえたとしたら……。

幸乃が親友をやめると言い出した理由が分かるだろうか?
日差しが薄れてきた放課後の校舎は、いつも怖いくらいに静まり返っている。

とくに備品置き場になっている旧校舎は、時間が止まってしまったみたいに自分の足音しか聞こえない。
沙耶香
沙耶香
……こ、これだ
足を止めた先にあったのは、密ちゃんに会えるというロッカーだった。

幸乃に拒絶されてから、私は自分なりに気持ちの折り合いをつけようとしてきた。

でも、どうしても納得ができないし、今では幸乃に対しての怒りも生まれている。
沙耶香
沙耶香
(密ちゃんだったら、私の助けになってくれるかもしれない)
そして、おそるおそるロッカーの扉を開けると……。
沙耶香
沙耶香
う、嘘でしょ……?
目の前には、地下へと続く階段が広がっていた。

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