青白い光が消えたあと、私は密ちゃんの記憶の残像から解き放たれた。
ふいに知ってしまった、悲しい悲しい密ちゃんの秘密。
胸が苦しくなっていると、突然大きな音がした。
ドンドンドンドンッ!
その音に目を覚ました密ちゃんは、両手を上に突き上げて伸びをした。
語尾に『にゃー』がつく密ちゃんは、記憶の中で見た彼女よりもどこか幼く感じる。だけど、記憶が見える前、密ちゃんは泣いていた。
なにか声をかけたかったけれど、黒猫ヒソカちゃんと入れ替わっている体では、なにも言うことができなかった。
ドンドンドンドンッ!
階段の上で、女子が叫んでいる。どうやらロッカーを必死に叩いているみたいだけど、ここに繋がる階段が現れずに怒っている様子だ。
密ちゃんは、呆れた顔で女子の声を無視している。そのうちに諦めたのか、静かになった。
すると、秘密の教室に誰かがやってきた。それは、私の姿をした黒猫ヒソカちゃんだった。
密ちゃんがそう促すと、私の姿をしたヒソカちゃんが体当たりをしてきた。
思わず目を閉じ、おそるおそる瞼を開けると、驚くべきことに──。
数時間ぶりの自分の体は、まるでどこかで遊んできたかのように制服が少し汚れているだけで、他はなにも問題なさそうだ。
一方のヒソカちゃんは毛並みに不満があるみたいで、すぐさま自分の体をペロペロと舐めていた。
わかっていたのなら、どうして密ちゃんは私の前で涙を見せたのだろう。
なんで、私に密ちゃんの過去が見えたのだろうか。
もしも誰かに知ってほしいという密ちゃんの気持ちが残像となり、私に過去を見せたのだとしたら……。
アイテムを拾って、ここに導かれたことにも意味があるような気がした。
その言葉を伝えると、密ちゃんはわかりやすく驚いていた。
私が見た生前の密ちゃんの姿は、ほんの一部分に過ぎない。
だけど、いじめられていた友達をかばって、野良猫に名前を付けてあげた密ちゃんは、誰よりも優しい女の子だった。
すると、密ちゃんはふっと笑ってみせた。
密ちゃんじゃなくて、華ちゃん。
すごくすごく綺麗な名前だと思った。
そう伝えた瞬間、私の意識は静かに途絶え、辺りを見回すとそこは秘密の教室ではなく、中庭になっていた。
近づいてきたのは、私の掃除が終わるのを待っていてくれた友達だ。
呆然としている私を見て、友達は不思議そうに首を傾げていた。
どうやら、体が入れ替わる前の時間に戻っているらしい。
全部が夢だったのではないかと思ったけれど、私の腕には密ちゃんのアイテムが着いたままだった。
私はブレスレットが壊れないように、そっとハンカチに包んだ。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。