第19話

吉田まおみ⑥
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2026/06/26 09:00 更新
聖奈
聖奈
まおみ……
ゴールラインの先で、地面に倒れ込んだ私を聖奈が見下ろしていた。

予選1位通過した聖奈は、当然全国大会に行ける。

一方の私は全国に行けないどころか、このまま部活も引退だ。

なんで、こうなってしまったのかはわからない。

だけど、私の陸上人生をめちゃくちゃにした人ならはっきりしている。
まおみ
まおみ
なんで……なんで……
まおみ
まおみ
なんで、あんたが全国大会に行くのよっ!!!
私は聖奈を睨み付けた。
まおみ
まおみ
自分じゃなにもできないからって私の真似ばっかりして、本っ当に最悪!
聖奈
聖奈
ま、まおみ、私は……
まおみ
まおみ
っ、そうやって被害者面しないでよ!
まおみ
まおみ
私の調子を狂わせてこれで満足!?
まおみ
まおみ
なんで私より格下のあんたに負けなきゃいけないわけ?
まおみ
まおみ
スパイクを入れ替えておいたのに、こんなのありえない! ……あ
感情を抑えることができない私は、うっかりとスパイクのことをバラしてしまった。
聖奈
聖奈
入れ替えたって、ひょっとして私のロッカーに入ってたまおみのスパイクのこと?
まおみ
まおみ
は?
聖奈
聖奈
前に間違って私のところに入ってたから、まおみのロッカーに戻しておいたけど……
まおみ
まおみ
(私のところに、戻した?)
密ちゃんから貰った蛍光色のスパイク。聖奈はたしかにそれを履いているけれど、私も同じものを履いている。
まおみ
まおみ
(ま、まさか……)
おそるおそる自分のスパイクを確認すると、中敷きにスマイルマークの目印が書かれていた。

やっぱりこれは私のスパイクだと胸を撫で下ろしたが、よく見てみるとスマイルマークの口が開いている。

私が自分の目印として書いたマークは、口が閉じていたはずなのに……。
まおみ
まおみ
わ、私のじゃない?
じゃあ、私は今まで誰のスパイクを……
密ちゃん
密ちゃん
まおみちゃん、やっほー!
そんな声がして、ハッとした。気づくと、聖奈の後ろに密ちゃんが立っていて、私に向かって手を振っている。

一瞬だけ聖奈と密ちゃんがグルだったのではないかと疑ったけれど、密ちゃんの姿は聖奈に見えていないようだった。
密ちゃん
密ちゃん
まおみちゃんにあげたブースターシューズは、気に入ってくれたかにゃ?
まおみ
まおみ
もしかして、中敷きのマークを書いたのは……
密ちゃん
密ちゃん
うん、私だよ! まおみちゃんの真似をして描いてみたんだ!
まおみ
まおみ
な、なんでアイテムにマークなんて……
密ちゃん
密ちゃん
だって、まおみちゃんはいつも自分のものにそうしてるでしょ?
密ちゃんは悪びれる様子はなく、ずっとにこにこしていた。
まおみ
まおみ
(つまり聖奈が使っていると思っていた〈ブースターシューズ〉を、私は自分のスパイクだと勘違いしていたってこと?)
聖奈
聖奈
ま、まおみ、誰と喋って……
まおみ
まおみ
あんたは黙ってて!
私は八つ当たりするように、聖奈を怒鳴りつけた。

聖奈だけじゃなく、他の人も変な目でこっちを見ているけれど、今はそんなのどうでもいい。
まおみ
まおみ
このアイテムは私じゃなくて、聖奈に使わせる予定だったの! なのに印なんて描くから聖奈が元に戻して……いたっ
密ちゃんに詰め寄ろうとしたけれど、足の痛みがひどくて動くことができない。

そんな私のことを、密ちゃんは満足そうに見つめていた。
密ちゃん
密ちゃん
だから、見た目で判断しちゃダメって言ったのに。でも、まおみちゃんは大会が終わったから、もう走れなくなってもいいんだもんね?
まおみ
まおみ
………っ
密ちゃん
密ちゃん
這いつくばってゴールしたまおみちゃんのことをみんなが覚えてる。よかったね。記録じゃなくてみんなの記憶には残ったよ!

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