第8話

西村友紀①
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2026/04/10 09:00 更新
俺の名前は西村にしむら友紀ともき。夕闇高校に通う2年生。

自分で言うのもおこがましいが、クラスではわりと〝ムードメーカー〟として知られていて、友達からは「友紀がいるとクラスが明るくなる」とか「お前の話を毎日楽しみにしてる!」なんて言ってもらえることが多い。

今日も昼休み。賑やかな食堂の片隅で仲のいい数人のメンバーとうどんやおにぎりを頬張りながら、いつものように楽しい話をしていた。
友紀
友紀
それで、昨日の帰り道にうちの裏手にある雑木林ぞうきばやしの前を通りかかったら、こーんなにでかい黒い影が目の前を横切ったんだよ! バァーッてさ!
俺ははしを一度置き、大げさな身振り手振りを交えて説明する。

友達の視線が一斉にこちらへ集中すると、俺は期待に応えるように、少しだけ声のトーンを落として間を取った。
友紀
友紀
未確認生物かもしれないって思って、その影を追いかけてみたんだ。途中で見失いそうになったんだけど、なんとか追い付いて正体を突き止めたんだよ
引きのある語り口はお手のもの。みんなの関心がさらに高まっているのを感じた。
友紀
友紀
黒い影の正体は、なんと、なんと、なんと……! 超巨大な黒猫だったんだ!
友紀
友紀
いやマジで、普通の猫の5倍はあったと思う。しかもしっぽが二股に分かれてて、絶対あれは猫又の妖怪だった!
クラスメイトA
おおっ、マジかよ!? 写真とか撮れたんじゃねえの?
友紀
友紀
そこが不思議なんだけど、スマホを構えた途端にカメラが起動しなくなったんだ。どうしてもレンズが真っ暗でさ。やっぱ妖怪パワーかな
クラスメイトB
友紀ってさ、前にも『UFOに連れ去られた』とか言ってなかったっけ?
友紀
友紀
うん。耳の後ろに小さな傷があって、そこにICチップを埋め込まれたみたいなんだよ
友紀
友紀
たぶん宇宙人が俺を〝お気に入り〟にしたんだと思う。俺、そういうのによく会うんだよ。好かれてんのかな?
冗談めかして言うと「友紀だったらワンチャン友達だと思われてそう!」なんて、みんながさらに盛り上がっていた。
友紀
友紀
(そう、そう、これこれ!)
周りから注目されることが心地よくて、内心でガッツポーズをした。

自分の話でみんなが楽しんでくれることこそ、俺の生き甲斐だ。

まあ、ほとんどが作り話だし、でかい黒猫に会ってなければ、当然UFOにだって拐われていない。

だけど、誰のことも傷つけてないし、みんなだって俺の話を楽しんでくれている。
友紀
友紀
(さて、明日はどんな作り話にしようかな?)
ネットで拾ったネタを見ながら次の話を考え始めたが、翌日のHRで担任からこんなことを言われた。
先生
今から進路調査票を配ります。みんなわかっていると思うけど、来年にはそれぞれ卒業後の進路を決めなくてはいけません
先生
いつまでも学生気分でいると足元をすくわれることになるので、今から気を引き締めてください
先生が配り始めたA4サイズの用紙には、「進学/就職」の選択欄のほか、希望する学校名や学部、あるいは希望職種や勤務地を書くスペースが用意されていた。
友紀
友紀
(進路なんて、早いだろ)
まだ高2だし、当然周りも同じ気持ちだと思いきや……。

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