密ちゃんから貰った〈バースデイリング〉は、右手の人差し指にぴったりはまった。
まるで、俺専用に作られたかのようなサイズ感だった。
試しに力を込めて引っ張ってみたが、密ちゃんが言っていたとおり、どうやっても外れなかった。
学校に行く前の朝食の時間。正面に座っている父さんに、優しく聞かれた。
〈バースデイリング〉は、毎日が誕生日になるアイテム。
とはいえ、昨日の自分の本当の誕生日がなかったことになるわけではないらしく、昨日も誕生日、今日も誕生日、明日も俺の誕生日になる。
そして、父さんたちだけではなく、学校でもアイテムの効果はすごかった。
俺が教室に入るなり、みんなが『おめでとう!』と声をかけてくれて、また色んな人からプレゼントをもらった。
みんなは、知らない。明日も明後日も明明後日も、俺の誕生日が来ることを。
誕生日というだけで、みんなが特別扱いしてくれる光景は、まさに夢のようだった。
俺はそれから、毎日欲しいものを買ってもらえるようになった。
誕生日だからとお小遣いももらえるし、学校では友達が大げさなくらいちやほやしてくれる。
誕生日の人を主役なんて言ったりもするけれど、まるで王様になったような気分だ。
しかし10日目を迎える頃、なんだか体に異変を感じるようになった。
それは体育の授業中、みんなと楽しくサッカーの練習をしている最中、急に息切れが激しくなった。
最初は、ただはしゃぎすぎたのかと思って気に留めなかったが、翌日には筋肉痛で階段すら登るのが大変になり、その次の日には体全体に疲労感が広がっていて、朝起きることができなかった。
母さんの心配をよそに、俺は学校に行った。
もしかしたら風邪を引いてるかもしれないけど、誕生日に学校を休むなんてもったいない。
だけど、体調不良は元に戻らなかった。
むしろ日を追うごとにひどくなっていって、クラスメイトたちが楽しそうに体を動かしているのに、自分だけが付いていけない。
誕生日だから、みんなは当然優しくしてくれる。
俺の机の上にはプレゼントという名のお菓子やジュースが大量に置かれていた。
友達から薦められたポテチを口に入れたものの、なんだか体だけじゃなくて胃も重たく感じる……。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!