第12話

西村友紀⑤
988
2026/05/08 09:00 更新
密ちゃんから貰った〈バースデイリング〉は、右手の人差し指にぴったりはまった。

まるで、俺専用に作られたかのようなサイズ感だった。

試しに力を込めて引っ張ってみたが、密ちゃんが言っていたとおり、どうやっても外れなかった。
お父さん
友紀、なにか欲しいものはあるか?
友紀
友紀
え?
学校に行く前の朝食の時間。正面に座っている父さんに、優しく聞かれた。
友紀
友紀
欲しいものはあるけど、昨日ゲームソフトを買ってもらったばっかりだし……
お父さん
昨日は昨日、今日は今日だろう。それに友紀は誕生日なんだから、遠慮しなくていいんだぞ
〈バースデイリング〉は、毎日が誕生日になるアイテム。

とはいえ、昨日の自分の本当の誕生日がなかったことになるわけではないらしく、昨日も誕生日、今日も誕生日、明日も俺の誕生日になる。
友紀
友紀
遠慮しなくていいなら、新しいスマホがほしい。もう三年も同じやつ使ってるし
お父さん
それなら今日学校から帰ってきたら、母さんと見に行ってきなさい。な?
お母さん
ええ。スマホを替えたら、ケーキを買って友紀のお祝いもしようね
友紀
友紀
まじ? やった!
そして、父さんたちだけではなく、学校でもアイテムの効果はすごかった。

俺が教室に入るなり、みんなが『おめでとう!』と声をかけてくれて、また色んな人からプレゼントをもらった。
友紀
友紀
みんな、こんなにいいのかよ?
クラスメイトA
誕生日なんだから当たり前だろ!
クラスメイトB
そうそう。今日は友紀の日なんだから!
クラスメイトC
でも、特別なのは誕生日だけだからね?
みんなは、知らない。明日も明後日も明明後日も、俺の誕生日が来ることを。
友紀
友紀
(まじで最高すぎる……!!!)
誕生日というだけで、みんなが特別扱いしてくれる光景は、まさに夢のようだった。
俺はそれから、毎日欲しいものを買ってもらえるようになった。 

誕生日だからとお小遣いももらえるし、学校では友達が大げさなくらいちやほやしてくれる。

誕生日の人を主役なんて言ったりもするけれど、まるで王様になったような気分だ。


しかし10日目を迎える頃、なんだか体に異変を感じるようになった。

それは体育の授業中、みんなと楽しくサッカーの練習をしている最中、急に息切れが激しくなった。

最初は、ただはしゃぎすぎたのかと思って気に留めなかったが、翌日には筋肉痛で階段すら登るのが大変になり、その次の日には体全体に疲労感が広がっていて、朝起きることができなかった。
お母さん
友紀、大丈夫?
友紀
友紀
なんか体がダルくて…………
お母さん
せっかくの誕生日なのにね。今日学校休んでもいいわよ?
友紀
友紀
いや、行くよ
母さんの心配をよそに、俺は学校に行った。

もしかしたら風邪を引いてるかもしれないけど、誕生日に学校を休むなんてもったいない。

だけど、体調不良は元に戻らなかった。

むしろ日を追うごとにひどくなっていって、クラスメイトたちが楽しそうに体を動かしているのに、自分だけが付いていけない。
クラスメイトA
友紀、どうしたの?
クラスメイトB
今日カラオケ行けそう?
クラスメイトC
友紀の好きなお菓子もあるよ?
誕生日だから、みんなは当然優しくしてくれる。

俺の机の上にはプレゼントという名のお菓子やジュースが大量に置かれていた。
クラスメイト
ほら、これ食べて元気になりなよ!
誕生日なんだから!
友紀
友紀
あ、ありがとう
友達からすすめられたポテチを口に入れたものの、なんだか体だけじゃなくて胃も重たく感じる……。

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