第16話

吉田まおみ③
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2026/06/05 09:00 更新
聖奈
聖奈
あれ、まおみ、どこに行くの?
部活が終わったあと、正門とは反対方向に行こうとしているところを聖奈に見つかってしまった。
まおみ
まおみ
あー……ちょっと教室に忘れ物しちゃって
聖奈
聖奈
それなら一緒に行くよ!
まおみ
まおみ
だ、大丈夫、大丈夫!
聖奈んちは門限厳しいんだから早く帰りな
聖奈
聖奈
そう? じゃあ、また明日ね!
聖奈が遠ざかるのを確認して、私は旧校舎に急いだ。

夕暮れ時だからか校舎の中は薄暗く、オカルト系に強い私でも身震いするほど不気味な雰囲気だ。
まおみ
まおみ
あ、あった…………!
密ちゃんに会えるロッカーを見つけた瞬間、不安が期待に変わった。
まおみ
まおみ
(密ちゃん、どうか私に力を貸して!)
そんな願いを心で唱えながら、ロッカーの扉を開けた。

私の願いが通じたのか、ロッカーには地下までの階段が続いていた。
まおみ
まおみ
や、やったあ! ありがとう、密ちゃん!
私はまるで小さな子供みたいに、勢いよく階段を駆け下りる。

見えてきたのは、机と椅子が並んでいる教室だった。

時代を感じさせる古びた匂いとともに、黒板にはかつて授業が行われていた形跡がうっすらと残っていた。
密ちゃん
密ちゃん
ようこそ、秘密の教室へ
中央の席に座っている女の子が、私に向かってにこりと微笑んだ。

ビー玉のような目は、まるで瞳孔どうこうがまん丸になった猫みたいだった。
まおみ
まおみ
あなたが密ちゃん?
初めまして、私は吉田まおみ。よろしくね
密ちゃん
密ちゃん
握手なんて求めていいの? ユーレイと触れ合ったら、まおみちゃんもユーレイになっちゃうかもしれないよ?
まおみ
まおみ
ユーレイになるのは困るけど寿命ならあげるよ
密ちゃん
密ちゃん
にゃにゃっ? そんなにあっさり?
まおみ
まおみ
うん。だって密ちゃんのアイテムがほしいから
密ちゃん
密ちゃん
それなら、まおみちゃんにはこれをあげるにゃ
密ちゃんが蛍光色のスパイクを差し出してきた。

そのアイテムは、先ほど私が履いていたスパイクとまったく同じ見た目だ。
まおみ
まおみ
え、からかってる?
これは私のスパイクでしょ?
密ちゃん
密ちゃん
見た目で判断しちゃダメだよ。このアイテムは〈ブースターシューズ〉。履くだけで走るスピードが格段に速くなる魔法の靴でーす♪︎
まおみ
まおみ
(履くだけで足が速くなる……?)
欲しすぎて、思わず生唾なまつばを呑んでいた。
まおみ
まおみ
でも、速く走れる代わりになにかデメリットがあるんでしょ?
密ちゃん
密ちゃん
まおみちゃんは勘がいいね!
密ちゃん
密ちゃん
ブースターシューズを履いて走ると、かなり足に負担がかかるにゃー。場合によっては選手生命が絶たれちゃうかも?
まおみ
まおみ
…………選手生命
でも、私にとって今年は陸上ができる最後の年。次の大会では、何が何でも結果を残さなければならない。
まおみ
まおみ
それでもいい。アイテムの副作用は大会が終わったあとに考えるよ
密ちゃん
密ちゃん
つまり、まおみちゃんは大会のあとにもう走れなくなってもいいってことだね?
まおみ
まおみ
うん。そのぐらい私は今回の大会が全てなの
密ちゃん
密ちゃん
そこまで覚悟が決まっているなら、このアイテムはまおみちゃんにあげるにゃ
そうして私は寿命と引き換えに〈ブースターシューズ〉を手に入れた。

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