部活が終わったあと、正門とは反対方向に行こうとしているところを聖奈に見つかってしまった。
聖奈が遠ざかるのを確認して、私は旧校舎に急いだ。
夕暮れ時だからか校舎の中は薄暗く、オカルト系に強い私でも身震いするほど不気味な雰囲気だ。
密ちゃんに会えるロッカーを見つけた瞬間、不安が期待に変わった。
そんな願いを心で唱えながら、ロッカーの扉を開けた。
私の願いが通じたのか、ロッカーには地下までの階段が続いていた。
私はまるで小さな子供みたいに、勢いよく階段を駆け下りる。
見えてきたのは、机と椅子が並んでいる教室だった。
時代を感じさせる古びた匂いとともに、黒板にはかつて授業が行われていた形跡がうっすらと残っていた。
中央の席に座っている女の子が、私に向かってにこりと微笑んだ。
ビー玉のような目は、まるで瞳孔がまん丸になった猫みたいだった。
密ちゃんが蛍光色のスパイクを差し出してきた。
そのアイテムは、先ほど私が履いていたスパイクとまったく同じ見た目だ。
欲しすぎて、思わず生唾を呑んでいた。
でも、私にとって今年は陸上ができる最後の年。次の大会では、何が何でも結果を残さなければならない。
そうして私は寿命と引き換えに〈ブースターシューズ〉を手に入れた。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。