高校に入学して、早半年。ようやく心を許せる友達ができた〝弥生〟は、充実した学校生活を送っていた。
午前授業が終わった昼休み。弥生に声をかけたのは同じクラスのミヨ、ナツキ、シオリだった。
弥生は、弾んだ声で返事をする。
複雑な家庭環境で育った弥生には、両親がいない。ずっと父方の祖母が母親代わりだったけれど、一年ほど前に他界。それからは親戚の家で暮らしているが、そこに弥生の居場所はなく、厄介者として扱われていた。
そんな弥生にとって、夕闇高校へ入学するという夢だけが唯一の光だった。
その夢が現実となり、新たな人生がスタートしたと感じている弥生。
今まで友達とも疎遠になりがちだったが、ミヨを中心としたグループに入れてもらい、楽しい毎日を過ごしていた。
4人でお弁当を囲みはじめてすぐ、ミヨが恋バナを振ってきた。
まだ高校生になったばかりとはいえ、彼氏がいる人も珍しくなく、ミヨは常日頃から彼氏が欲しいと口に出している女の子だった。
グループの中でも大人っぽいシオリには、両思いの人がいる。まだ交際にはいたっていないものの、ほぼ彼氏と呼んでもいい存在だ。
ね? とナツキから同意を求められ、弥生は大きく頷いた。
ミヨが名前を出した時任くんとは、他のクラスの男の子だ。
背が高く色が白い彼は、今どきの男の子という感じで、顔もかなり整っている。
時任くんは入学当初からかっこいいと騒がれていて、今でもその人気は健在だ。
ミヨとシオリが盛り上がっている中、ふとナツキを見ると顔が引きつっているように感じた。
どうしたのだろうと心配していたら、その理由をふたりきりの時にこっそり教えてくれた。
ナツキと時任くんが同じ中学出身ということは知っていたけれど、学校ではほとんど接点はなく、なにかを話したり、挨拶してるところも見たことがなかった。
どうやら時任くんファンから妬まれたり、睨まれたり、『別れろ』という手紙が靴箱に入っていたこともあったらしい。
ミヨが時任くん推しなのはずいぶん前からだけど、友達の彼氏だったら話は変わってくるわけだし、早めに言ったほうがいいとアドバイスをしてもナツキは首を横に振るだけだった。
友達に嘘をつくのは心苦しいけれど、ナツキの切羽詰まった顔を見たら拒否することはできなかった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。