第22話

永井花③
995
2026/07/17 09:00 更新
高校に入学して、早半年。ようやく心を許せる友達ができた〝弥生やよい〟は、充実した学校生活を送っていた。
ミヨ
弥生、お弁当いっしょに食べよう!
午前授業が終わった昼休み。弥生に声をかけたのは同じクラスのミヨ、ナツキ、シオリだった。
弥生
弥生
うん、食べよう!
弥生は、弾んだ声で返事をする。

複雑な家庭環境で育った弥生には、両親がいない。ずっと父方の祖母が母親代わりだったけれど、一年ほど前に他界。それからは親戚の家で暮らしているが、そこに弥生の居場所はなく、厄介者として扱われていた。

そんな弥生にとって、夕闇高校へ入学するという夢だけが唯一の光だった。

その夢が現実となり、新たな人生がスタートしたと感じている弥生。

今まで友達とも疎遠そえんになりがちだったが、ミヨを中心としたグループに入れてもらい、楽しい毎日を過ごしていた。
ミヨ
ねえ、みんな好きな人とかっている?
4人でお弁当を囲みはじめてすぐ、ミヨが恋バナを振ってきた。

まだ高校生になったばかりとはいえ、彼氏がいる人も珍しくなく、ミヨは常日頃から彼氏が欲しいと口に出している女の子だった。
シオリ
私にはほら、まーくんがいるから
グループの中でも大人っぽいシオリには、両思いの人がいる。まだ交際にはいたっていないものの、ほぼ彼氏と呼んでもいい存在だ。
ミヨ
今の質問は弥生とナツキに聞いたの!
弥生は好きな人いる?
弥生
弥生
私は全然まだそういうのに興味がなくて
ミヨ
うん、弥生はそうっぽい。ナツキはどう?
ナツキ
わ、私も恋愛はまだいいかなって感じかな
ね? とナツキから同意を求められ、弥生は大きく頷いた。
ミヨ
私はね、やっぱり時任ときとうくんが好き!
ミヨが名前を出した時任くんとは、他のクラスの男の子だ。

背が高く色が白い彼は、今どきの男の子という感じで、顔もかなり整っている。

時任くんは入学当初からかっこいいと騒がれていて、今でもその人気は健在だ。
ミヨ
どうしたら時任くんと仲良くなれると思う?
シオリ
まずは連絡先を聞くところからじゃない?
ミヨ
えー無理、聞けなーい!
ミヨとシオリが盛り上がっている中、ふとナツキを見ると顔が引きつっているように感じた。

どうしたのだろうと心配していたら、その理由をふたりきりの時にこっそり教えてくれた。
ナツキ
……実は私ね、時任くんと付き合ってるんだ
弥生
弥生
ええっ!?
ナツキ
みんなには秘密にしてるんだけど、時任くんとは幼なじみなの
ナツキと時任くんが同じ中学出身ということは知っていたけれど、学校ではほとんど接点はなく、なにかを話したり、挨拶してるところも見たことがなかった。
弥生
弥生
な、なんで隠してたの?
ナツキ
時任くんとは中学の時から付き合ってるんだけど、その頃から女の子に人気があって色々あったんだよね……
どうやら時任くんファンからねたまれたり、にらまれたり、『別れろ』という手紙が靴箱に入っていたこともあったらしい。
ナツキ
だから、高校では内緒で付き合おうって時任くんと決めたんだ
弥生
弥生
で、でもミヨには伝えたほうがいいんじゃないの?
ミヨが時任くん推しなのはずいぶん前からだけど、友達の彼氏だったら話は変わってくるわけだし、早めに言ったほうがいいとアドバイスをしてもナツキは首を横に振るだけだった。
ナツキ
ミヨには絶対に言えないし、隠し通すつもりでいる
弥生
弥生
だ、だけどっ
ナツキ
弥生だから話したの。このことはふたりだけの秘密にして。ね?
弥生
弥生
………わ、わかった
友達に嘘をつくのは心苦しいけれど、ナツキの切羽せっぱ詰まった顔を見たら拒否することはできなかった。

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