第9話

西村友紀②
885
2026/04/17 09:00 更新
クラスメイトA
俺はA大を目指す予定。来年の受験はすでに計画を立てて、来週から予備校に通うことも決まってるよ
クラスメイトB
私はね、保育の専門学校に進みたい。幼児教育の勉強に興味があるし、保育士さんになることが小さい頃からの夢だったんだ!
クラスメイトC
俺は就職かな。実は気になる企業があってさ、夏にある企業説明会にもう申し込んだから、みんなより一歩リードって感じ
予想に反して、周囲の友達は卒業後の進路についてのプランをしっかり思い描いていた。

志望理由や試験対策などの情報交換に花を咲かせていて、その輪に入れない俺は、ただぽかんとしていた。
クラスメイト
それで友紀はどうするんだよ?
就職? 進学?
友紀
友紀
え、俺はなにも…………
友紀
友紀
てか、そんなのまだ考えなくてもいいだろ。
だって、俺ら高2だぜ?
友紀
友紀
毎日楽しかったらそれでいいじゃん!
友紀
友紀
(進路なんて、だるい、だるい)
友紀
友紀
(そんなことより俺の話のほうが絶対に面白いし、みんなだってそう思っているはずだ)
クラスメイトA
いやあ、さすがにそろそろ大人にならないと
クラスメイトB
楽しむことより、進路のほうが大事っていうか……。遊ぶのもいいけど、進路を決めてからこそ心から楽しめるんじゃない?
クラスメイトC
それな。友紀もふざけてないで、ちゃんと考えたほうがいいよ
いつも俺の話に乗ってくれる友達が、気づけばみんな進路の話ばかりするようになっていた。
友紀
友紀
(……なんだよ、みんなして)
担任が進路の話を持ち出してきたせいで、その日からみんなの雰囲気がガラリと変わった。

あれ以来、誰も俺の話に耳を傾けてくれないだけじゃなく、ちょっかいをかけて気を引こうとしても構ってもらえない。

みんなが好きそうなネタもあるし、盛り上がりそうな作り話だっていっぱい用意してるのに……。
友紀
友紀
なあ、俺がとびっきり面白い話をしてやるから、勉強なんてやめにしようぜ!
そこで俺は最後の手段に出た。

相手にしてもらえないなら強行突破しかないと思い、勢いよく机の上に広がっていた友達の受験用ノートを奪い取った。
友紀
友紀
ほら、みんなちゅーもく!
手をパンパンっと叩き、教室中の視線を集めようと必死になったその時、どこからか低いため息が聞こえた。
クラスメイト
友紀、俺たちは真剣に勉強してるんだよ
友紀
友紀
俺だって真剣に面白い話をしようとしてるよ
クラスメイト
そんなの、ただの作り話だろ?
友紀
友紀
え……
クラスメイト
いや、みんな普通に嘘だって気づいてたよ。聞いてるぶんには楽しかったから、とくに指摘はしなかったけど
ひとりの発言を皮切りに、周りも同意するように頷いていた。
クラスメイトA
友紀は俺らを楽しませたいわけじゃなくて、自分が注目されたいだけだろ?
クラスメイトB
今まで友紀の話に付き合ってたのは、みんな暇だったからだよ
クラスメイトC
でも今はそんな時間ないし、友紀も現実を見たほうがいいと思う
これまで散々、興味津々で楽しそうに耳を傾けてくれていた友達が、一斉に冷めた目つきで俺のことを見ていた。

たしかに俺は、注目をされるのが好きだ。

いつだって自分の存在をクラスのど真ん中に置いておきたいし、『友紀は面白くて最高だな!』って、ちやほやされたい。

だけど、もう誰も俺に関心がない。

俺の作り話なんかにもう興味はないし、こっちを見てくれることもない。

――なんなんだよ、くそ。

胸の奥がギュウッと締めつけられるような、重苦しい退屈さ。

進路なんかより、俺だけを特別に扱ってほしい。

つまんない、つまんない。
友紀
友紀
(こんなの死ぬほどつまんない!)

プリ小説オーディオドラマ