誰ともすれ違えないほど狭い階段は不気味な空気を纏い、ここを下りてしまえばもう二度と帰って来られないのではないかと感じさせるほどだった。
猫の鳴き声は、階段の下から聞こえた。まるで、私のことを呼んでいるみたいに。
猫の鳴き声に導かれるように、ゆっくりと足を前に進ませる。
そうして階段を全て下り終わると、机と椅子が整然と並ぶ教室が現れた。
私は思わず飛び上がる。黒板の前に置かれた教卓の上に、ボブヘアの女の子が座っていた。
当たり前のように私の名前を呼ぶ彼女のセーラー服は、夕闇高校で昔使われていたらしい赤色のリボンだった。
密ちゃんと会った生徒は他にもたくさんいて、全部は覚えきれないらしい。
……きっと、私も同じ。密ちゃんにとっては大勢の生徒の中のひとりに過ぎないのだろう。
まだなにも言っていないのに、密ちゃんには全部がバレているみたいだ。
密ちゃんが見せてきたのは、コンパクトサイズの手帳だった。
密ちゃんに言われるがまま、消しゴム手帳に【幸乃へのモヤモヤ】と書き込んだ。
すると、胸の中で渦巻いていたモヤモヤが、本当にスッと消えてしまった。
思わず、ゴクリと息を呑んだ。
本当になんでも消してしまえるのなら、ひょっとして人を消すこともできたりするんだろうか?
なんだか急に怖くなってきた。アイテムを返そうとした手は、逆に密ちゃんに突き返されてしまった。
私は半ば騙される形で、密ちゃんからアイテムを受け取った。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。