第18話

吉田まおみ⑤
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2026/06/19 09:00 更新
雲ひとつない青空の下、待ちに待った陸上競技大会が開催された。

観客席は多くの人で埋まっていて、時折大きな拍手と声援が聞こえてくる。

すでに他の競技の予選が始まっていて、短距離走の私たちも陸上トラックの外側でウォーミングアップをしていた。
まおみ
まおみ
大丈夫なの?
私は隣でテーピングを巻き直している聖奈に声をかけた。

足に不安を抱えていた聖奈だが、なんとか調整が間に合い、ギリギリで大会に出場できることになった。
聖奈
聖奈
3年間の集大成だもん。やれることはやるつもりだよ!
私に向かって微笑んだ聖奈は、もちろん今日もブースターシューズを履いている。
聖奈
聖奈
こうして大会に出られるのも、全部まおみのおかげだよ
まおみ
まおみ
私のおかげ?
聖奈
聖奈
だって、まおみがいたから私は走ることの楽しさを知った。やっぱりまおみは私の憧れだよ!
そう言って聖奈は、ブースターシューズの紐をきつく結び直していた。

聖奈には悪いけれど、私はもうその無邪気さには騙されない。

さんざん私の真似をして、私が頑張って手に入れた走り方まで奪おうとした。

そんなの許されないし、許してはいけない。

だから私は今日まで聖奈のことをサポートするふりをして、走らせてきた。

その足が早く壊れるように念じながら。
聖奈
聖奈
まおみは私の憧れでありライバルでもあるから、お互いに全力を出し切ろうね!
まおみ
まおみ
うん、頑張ろう
聖奈と握手を交わしたところで、短距離走の予選開始を知らせるアナウンスが流れた。
まおみ
まおみ
(ライバル? 冗談じゃない)
まおみ
まおみ
(私の実力は、どう考えても聖奈より上だ)
聖奈にアイテムを使わせている横で、私も地道な練習を重ねてきた。おかげで今日のコンディションは最高だし、誰にも負ける気がしない。
そして、私たちの出番がやってきた。

100メートル走は各学校の選手8名ずつで行われ、私と聖奈は同じ予選三組に割り当てられた。

私が走るレーンはちょうど中央の4レーン。その隣の5レーンには聖奈が配置されている。
審判員
位置について、よーい
パンッ! というピストルの音と同時に地面を強く蹴り上げた。

スタートダッシュに成功した私は、一気に加速してゴールまで突き進む。

身体中の血流が一気に沸き上がり、足の裏でしっかりとトラックの感触を感じる余裕もあった。

隣で走る聖奈も頑張っていたが、実力の差は明らかだ。

スタートから50メートル地点に差し掛かる頃には、自分の勝利を確信していた。
まおみ
まおみ
(ああ、気持ちいい、最高……!)
観客席からの応援も最高潮に達し、まるで私のためだけに用意された舞台のように感じられた。  
まおみ
まおみ
(私が1位でゴールしたあと、聖奈はどんな顔をするだろう?)
まおみ
まおみ
(聖奈なんて予選すら突破できずに、悔しがればいいんだ)
私の勢いは誰にも止められず、70メートル、80メートル、90メートルとゴールラインが近づいてくる。

まるで風になったかように走っていた、その瞬間──。
まおみ
まおみ
ひゃっ……!
突然、膝がガクッと下がった。そのまま地面に転んでしまった私の横を、聖奈が追い抜いていく。
まおみ
まおみ
うそ、やだ、なんで……
聖奈の背中が、スローモーションのように私の瞳に映っている。聖奈は1位でゴールして、それに続くように他の選手たちも走り終えていた。
まおみ
まおみ
なんで、なんでよっ……!
そんな中、私は地面に倒れたまま動けずにいた。

なぜか、足に力が入らない。転んだ時に怪我をしたのではなく、足そのものの感覚がなくなっている。
聖奈
聖奈
まおみ………!
ゴールした聖奈が、私の元に駆け寄ってきた。私のことを助けようとする彼女に向かって、大きな声を出す。
まおみ
まおみ
触らないでっ!
陸上競技では、途中で他者から手助けを受けたりゴールまで補助してもらった場合、その選手はそこで失格となる。  

私は地面をいつくばって、なんとかゴールをしたものの、結果は突然最下位。

つまり予選敗退で、全国大会には出られないということだ。
まおみ
まおみ
(こんなはずじゃなかった)
まおみ
まおみ
(こんなの、ありえない)
まおみ
まおみ
(なんで、なんで、なんでっ……!)

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