雲ひとつない青空の下、待ちに待った陸上競技大会が開催された。
観客席は多くの人で埋まっていて、時折大きな拍手と声援が聞こえてくる。
すでに他の競技の予選が始まっていて、短距離走の私たちも陸上トラックの外側でウォーミングアップをしていた。
私は隣でテーピングを巻き直している聖奈に声をかけた。
足に不安を抱えていた聖奈だが、なんとか調整が間に合い、ギリギリで大会に出場できることになった。
私に向かって微笑んだ聖奈は、もちろん今日もブースターシューズを履いている。
そう言って聖奈は、ブースターシューズの紐をきつく結び直していた。
聖奈には悪いけれど、私はもうその無邪気さには騙されない。
さんざん私の真似をして、私が頑張って手に入れた走り方まで奪おうとした。
そんなの許されないし、許してはいけない。
だから私は今日まで聖奈のことをサポートするふりをして、走らせてきた。
その足が早く壊れるように念じながら。
聖奈と握手を交わしたところで、短距離走の予選開始を知らせるアナウンスが流れた。
聖奈にアイテムを使わせている横で、私も地道な練習を重ねてきた。おかげで今日のコンディションは最高だし、誰にも負ける気がしない。
そして、私たちの出番がやってきた。
100メートル走は各学校の選手8名ずつで行われ、私と聖奈は同じ予選三組に割り当てられた。
私が走るレーンはちょうど中央の4レーン。その隣の5レーンには聖奈が配置されている。
パンッ! というピストルの音と同時に地面を強く蹴り上げた。
スタートダッシュに成功した私は、一気に加速してゴールまで突き進む。
身体中の血流が一気に沸き上がり、足の裏でしっかりとトラックの感触を感じる余裕もあった。
隣で走る聖奈も頑張っていたが、実力の差は明らかだ。
スタートから50メートル地点に差し掛かる頃には、自分の勝利を確信していた。
観客席からの応援も最高潮に達し、まるで私のためだけに用意された舞台のように感じられた。
私の勢いは誰にも止められず、70メートル、80メートル、90メートルとゴールラインが近づいてくる。
まるで風になったかように走っていた、その瞬間──。
突然、膝がガクッと下がった。そのまま地面に転んでしまった私の横を、聖奈が追い抜いていく。
聖奈の背中が、スローモーションのように私の瞳に映っている。聖奈は1位でゴールして、それに続くように他の選手たちも走り終えていた。
そんな中、私は地面に倒れたまま動けずにいた。
なぜか、足に力が入らない。転んだ時に怪我をしたのではなく、足そのものの感覚がなくなっている。
ゴールした聖奈が、私の元に駆け寄ってきた。私のことを助けようとする彼女に向かって、大きな声を出す。
陸上競技では、途中で他者から手助けを受けたりゴールまで補助してもらった場合、その選手はそこで失格となる。
私は地面を這いつくばって、なんとかゴールをしたものの、結果は突然最下位。
つまり予選敗退で、全国大会には出られないということだ。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。