第7話

後輩の正体
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2021/05/17 10:02
りんたろうと久しぶりに喋って数日経った頃

昼休みに、さっちゃんが俺と市川くんを屋上へ誘う



清「教室じゃないってことは大事な話?」

さ「大事って言うか…」

さっちゃんは笑顔だった



さ「最近、みなとと話す事が多くてね、それで…」

慶「あー、付き合うとか?」



さ「ううん、えっと…体だけの関係になったの」




清「は!?」

慶「みなとと?」

さ「うん。ちょっと、きよちゃん、顔怖すぎ!双方合意してるから!」


清「何で付き合う訳じゃなくて体だけなん?意味分からんけど」

慶「お前が提案したの?」

さ「向こうから」

高校1年生が体だけの関係を提案?

いくら若い男同士が欲求の塊とは言え、この前まで中学生だったやつが?


清「何で付き合わんの?」

さ「いや、前から僕って長続きしないじゃん?理想ばっか追っちゃうし」

清「確かにそうやけど、いきなりそんな割り切った関係です、って言われても」


さ「みなとと話してたら、したい時にするだけでもいいじゃん、って言われて」

清「みなと、そんな事言ったんや」

さ「うん」

慶「どうだったの?」

さ「普通に良かったよ、彼氏じゃないからこっちも余計な詮索しなくて楽だし」


清「ヤるだけの関係でええの?」

慶「お互いフリーで納得してんならいいんじゃない?付き合ってないなら部活のやつにはバレない方がいいけど」

さっきから前のめりで聞きすぎたからか、市川くんが間に入る


さ「嫌なことも楽しいことあれば忘れるし、こういう関係があってもいいのかなって思った」

清「…好きにならんの?一緒に居たらどうなるか分からんやん」

さ「最初に約束してるから、それは無いかな」


清「…ほんまにそれだけの関係なんや」

慶「きよは納得してないみたいだね」

清「人のことやし、お互い良いなら何も言えんけど…それって好きな奴が出来たら止めるってこと?」

さ「そうだねー、さすがに付き合っててそれはね」

りんたろうの事だろうか、俺の顔を見つめるさっちゃん


つい、深いため息が出てしまう

清「市川くんが賛成するとは思わんかった」

慶「賛成も反対もないよ、ただ俺は生徒会長だから変な噂が立つとこっちも迷惑だから気をつけて欲しいだけ」

何とも割り切った答え


清「みなと、何でそんなことすんねんな?あいつモテるやろ」


慶「面倒なんじゃない?付き合うと色々あんじゃん?まぁ1年でその境地に達してたら凄いけどな」



俺らの年ならまだ分かるけど、小学生かと思うようなしょうもない事で大笑いして遊ぶみなとが…そんな事してるなんてまだ信じられない



授業中も、ふと思い出してしまい、頭を振って忘れようとするけど、気づくとボーッとしていた






部活に行くと当然みなとに会う

何事も無かったように接した方がええよな…




そんな事を考えていると

小「六花先輩!」

珍しく教室にこたが来る


清「どした?こんなとこ来て」

もうすぐ部活で会うのに…



小「部活前にちょっと来て欲しくて」




こたは校舎を出て体育館の方へ歩く


清「え?どこ行くん?うわっ!」

こたが急に立ち止まるのでぶつかる


小「ここから喋らないで下さい」

顔を近づけて小声で話すこた

顔、近いな…

黙って頷く



無理矢理生い茂った植木の中にこたと入らせられる


え?誰かの密会でも覗くん?


…あの人達しか思い浮かばない


みなとの事ならもう聞いたけど…今声出されへんし


こたの肩を突ついて口パクしてみる

清「 ?」 みなと?

こたが首を振る

…ほんまに通じてんのかな?

小声なら喋ってもええかな?と考えていると、こたが指を指す


ゆっくりこたの指先からその先へ視線を移す



思いもよらない相手、組み合わせで『密会』なのかも分からない



建物の角を曲がったところでりょうががしゃがみ、自分の膝をポンと叩いて目の前にいる男の手を引く


涼「いいって事だね?」

りょうがの膝の上に乗って頷き

そのまま唇を重ねたのはりんたろうだった

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