第25話

すれ違い
3,273
2021/05/31 09:03
月曜の朝、もうすぐ駅に着こうとしている時に電話が鳴る


涼「先輩、こたの様子がおかしいし、家に入れてくれない…」


涼「たまに気持ちが落ち込むとこうなるんだよね…薬飲んでないのかな」


薬に頼る程とは思ってもいなかったので言葉に詰まる



涼「先輩に来てもらった方がいいと思うんだけど…」

恋人を呼ぶのは当たり前のことだけど

本当は恋人じゃないから、りょうがが傍に居た方がいい気がした


涼「最近何か、いつもと違う様子ありました?先輩とは…してますよね?」


こんな時なのに、セックスしているかりょうがは聞いてくる


セックスにすがってる様子は分かってた
だから俺もセフレとして、って言ったけど



清「そっち行くから」

俺は反対のホームに回ってこたの家に向かった


りょうがは家の前で座り込んでいた


清『家の前に居るから開けて』



…既読がつくのに一向に返事がないし扉も開かない


既読無視されてもLINEし続けてるりょうがを見てたら、可哀想になって


清『開けてくれへんならほんまに警察呼んでこたみたいに強行突破するで、5分以内な』




…ガチャ

現れたこたはボサボサの髪で俯いていた


涼「こた!心配したよ!大丈夫?」


小「脅してくる人いるから…」

俺の顔は見ずに小声でボヤく


とにかく部屋に行こう、とりょうがが2階へ連れていく


りょうがは慣れてるかもしれないが、俺は本人を前にすると、どう声を掛けていいか分からない


りょうがはベッドに潜り込もうとするこたの顔を押さえ、まじまじと見つめる


涼「うん、そんなに酷くはないね」

表情で分かるのだろうか…


小「別に大丈夫だから」

そう言ってこたは布団に潜り込む


涼「どうした?落ち込んでるのは分かるけど…傍にいればそれで大丈夫なの?」

優しく声を掛けている

俺、やっぱりここに居ても何も出来ん気がする…


涼「あ、俺が居ない方がいいかな?先輩にバトンタッチしようか?」

え、断られそうで怖いんやけど…


しばらく沈黙が続く




小「…うん、ありがと、りょうが」





弱ってる人間にいきなり問い詰めても仕方ない事くらいは分かる

りょうがのように、と考えながら優しく声を掛ける


清「りょうがと居た方が良かったんやない?こんな時までフリしなくても、辛い時はりょうがに甘えればいいやん?りょうがかなり心配してたで」



小「…」

俺の話は無視かよ!
どうしたらええんやろ…


清「えっと…俺が出来ひんから、多分それから段々おかしくなったんよな?」


小「それじゃあ僕が先輩を責めてるみたいじゃん…」


清「いや、そういう意味やなくて…」



小「先輩が僕と関わりたくないのが良く分かった」


清「え?」


小「勃たないのはしょうがないけど、キスさえしなくなった…家に呼んでも勉強しかしないし、ろくに会話もなく帰っちゃう…そもそも僕が連絡しないと一緒に帰ろうって言わない」


清「や、キスしたらこたはセックスしたくなるやん?出来ないのにそんなん…可哀想やと思うし」


小「前に先輩としかセックスしてないって言ったよね?セフレを嫌がる先輩を巻き込んだ身としては、先輩だけなら少しは、この体も…汚いって嫌がらないかなと思ってそうしたんだけど」


清「セフレは良くないって言ったけど、汚いなんて思ってへんよ」


小「もう汚いんだけどね」



清「…1ヶ月くらい、してへんの?」


小「キスくらい、してくれても良くない?勃たないからって、先輩を傷つけるようなことはしてないし、これからもそのつもりだけど」


清「…」


小「付き合ってることになってるんだから、そういう対応してね、って言ったのに何も!何もないし!挙げ句の果てにはりんたろうさんと楽しそうにゲームしちゃって…あの笑い声、僕から逃げられて大喜びしてんのかと思った」


これは…拗ねてる、のか?


小「さっきだって、りょうが、りようがって!先輩は連れてこられた、って感じで僕の事まるで分かってないし」



清「…構って欲しかったん?」


こたは何も言わない


清「答えてや、俺はセックス出来ひんかったら用はないんやろな、関わり持たない方がこたにとっても良いやろなと思ってたんやけど。帰りやって、こたがセフレと会うかもしれんから俺から声掛けたら悪いしと思ってたし」




小「ばーか!みんな切っちゃったから、誰も…居ないのに」


清「はっきり言わんと分からん事もあるやん、ほら言えや」





小「…もっと構ってよ」


小さな震える声

布団をめくると、涙目のこたがいた




清「アホやなぁ」


距離感が分からんのは俺も一緒やけど、こんな1人で悩むことやないのに



清「こた、キスしよ?挿れられんけど…しよ?」

プリ小説オーディオドラマ