第33話

代替品
3,278
2021/06/07 09:12
2度果てたこたが、起き上がろうとする

肩を押してベッドに戻す


小「なに?」


清「恋人は終わった後もすぐに離れんよ?」


初めてこたに腕枕をする

抱きしめるようにくっついて、頬にキスをする


清「こうやって余韻に浸る笑」



小「腕枕、初めてだ」


清「さすがに居心地悪い?俺は恥ずいわ笑」


小「ううん、最近は先輩とばっかり一緒にいるし」


清「…ここで先輩呼びはちゃうで?」


小「…きよはるはこうやって恋人を愛してきたんだね」


清「まぁ…そうやけど、そんな大袈裟な言い方せんといて笑」

こたの髪を撫で、指で梳く


小「ん、気持ちいい」
目を閉じ、子供のような安らかな顔



良かった…


清「…俺は味方やよ」



追及せずにいれば拒絶されない
最近学んだ


こたの鉄壁なバリアの外でしか両手を広げることが出来ないけど



さっきの余計な一言は許してもらえただろうか…



寝てしまったこたから、そっと腕を抜いて起き上がる






(りょうが)

涼「みなとっ!帰ろう」

三「こたは?」

涼「六花先輩が迎えにきて今帰った」

三「迎えに来たんや!最近仲良しやな…」

涼「寂しい?」



三「こたは…先輩の事好きなん?」

やっぱりそう思うよね


涼「先輩に変に絡んではいたよね」

三「意地悪してたから、こっちが心配してたのに、いつの間にか付き合ってるって…」




涼「こたは分かってないんだよ、何にも」

三「え?」




涼「先輩はこたの事、好きだと思う?」

三「最近は仲良いし、分からんけど…先輩が何も知らずに好きになってるんやったら可哀想やない?」


上目遣いで下がり眉
中学の時から変わらない困り顔

俺と身長変わらないのに計算してんの?

首を傾げて下から上目遣いするなんて



涼「3人の秘密はもう3人じゃないと思う」



三「え!?先輩知ってるの!?」

涼「どこまで知ってるか分からないけど、何も知らない訳じゃない」

三「こたが誰かに言うなんて…考えられへんけど」

涼「大丈夫だから、とは言われたけど俺はまだ信用してないかな」

三「そりゃ、そんな簡単に消せへんよ、あんなこと…」




涼「…俺らに気を遣ってる、こた」

三「え?」

駅前の公園が見えた

お腹空いてるだろうな、と思ったけど昼ごはん前に寄ろう




涼「みなとはさ、何で俺にだけ下になるの?」

ベンチに腰掛けて聞く


三「は!?」

突然自分の事を聞かれて、みるみる顔が赤くなる


三「昼間っからやめてや!何なの?」




涼「こたはもう先輩にしか抱かれてないよ」

三「恋人なんて別れたらまた1人やん、そしたら俺らが必要やん」





涼「…俺も、みなとだけを抱きたい」

三「っ…いまさらっ」



長い沈黙…

みなとのサラサラな髪の間からポタポタと大粒の涙がこぼれて
すぐに土に吸収されていく

なかったものにされているようだ




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三「え…今…なんて、」


涼「こたと、セックスした」


三「ど、どういう事!?りょうが、無理矢理したん!?なんでっ!」


涼「痛っ、違うよ、落ち着いて!俺の話を聞いて」

俺の腕を掴む力が尋常じゃなかった



説明したものの、みなとは1日俺とロクに口をきかなかった

正確に言うと、誰とも喋らなかった



言わない訳にはいかなかった

でも今後、みなとと笑う事がないかもしれないと思うと憂鬱になった



次の日、みなとは顔を合わせるなり

三「りょうが、俺もこたを助けるから」


涼「みなと…」


三「りょうがも、こたも大事。こたが落ち着くなら俺も…する」



こたは気持ちの波をコントロールできなくて、たまに学校を休んでた

この時も学校に来てなかったから、一緒に家に向かい、玄関先で帰るよ、と声を掛ける



少し緊張した顔でインターホンを鳴らす姿を見て


涼「みなとっ」



勢いだけでみなとにキスをした



みなとの初めてのキスだけは
俺が貰いたかった



涼「頑張って」





それからこたは学校を休まなくなった


2人で居る時、何をしてるかなんて分かりきってるから、こたと過ごす時はお互いその報告だけした



こたが悪いなんて1度も思ったことは無い

命を断ちそうな危うい雰囲気さえあった彼を、俺とみなとが救ったんだ




3年になるとこたは塾に通った

勉強出来るのに何で?と思っていたが、ある時


小「今日の夜は塾の人と過ごすから」


涼「え?大丈夫な人なの?」


小「平気、後腐れなさそうな、お喋りじゃない人見つけたから。用が済んだら帰ってもらうし」




あの時から、自分のためじゃなくて俺らの為にこたは代替を探していたのかもしれない

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