第8話

あっちもこっちも乱れてる
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2021/05/18 13:12
2人の姿が見えなくなると、俺は乱暴に植木から飛び出した


清「どういうこと?こた何でそんな冷静なん?」


小「え、僕?何で?」


清「何でって、りょうがと付き合ってるんやろ?」


小「付き合ってませんよ」


清「キスしてたやん」


そう言ってから、昼休みに聞いたさっちゃんの話を思い出す




清「…まさかお前らも…体だけの関係なん?」



小「りょうがは幼なじみで友達でもありますけど」


清「幼なじみとそんな関係になるなよ…」


そう言ったものの、じゃあ何故俺が呼ばれたか考えると嫌な予感しかしない




清「りんたろうを見せる為に呼んだん?」

小「はい」

清「この前わざわざりんたろうを遊びに誘うから、復縁させようとしてんのかと思ったけど、どういうこと?」


小「あはは!そんな風に思ってたんですか?」

場違いな笑い声にイラッとしてしまう


清「何が可笑しいん?」

俺がイラついてんの分からんの?



小「押しに弱そうな人だと思ったから試したんです」

ボールペンの試し書きのような軽い言い方でサラッと言う


清「それでりょうがを誘わせたん?」


小「りょうがはあーゆー顔、好きですよ」



清「悪趣味やな、人の元カレに手出すなんて。俺の反応見て楽しんでんの?」


何の悪気もなく『楽しいです』と即答しそうな雰囲気があった

それでも腹立たしくて、言わないと気が済まなかった





小「別に…付き合うならちゃんとした人と付き合った方がいいですよ、あの人は止めた方がいいです」





急にまともな事言い出すから
調子狂って
すぐに言葉が出てこない



りんたろうが押しに弱いのか、元々いい加減なのかもう分からんけど、俺が望む人物像ではないのは確かで

それを違法と訴えたいような方法で
手っ取り早く教えてくれたのはこいつらだ



清「…元々付き合う気なかったし」


まともじゃないやつに、何でちゃんとした人と付き合え、なんて言われなあかんの?

そう思ったけど、疲れてしまった



俺が発した色んな言葉は全て間違ってないはずなのに

何でこんなにも打ちのめされた気分になるのか

りんたろうのせいだ、と決めつけてしまえば楽なのか





部活があるから黙って歩き出す

後ろから同じリズムで足音がする


同じ部活なんだから当たり前やけど、追われているようで何か気に入らない



清「…ポムポムプリン返せや」

結局こたが抱えて離さなかったのだ


小「毎日抱いて寝てるんで、よだれ付いてますよ」



はぁ。ほんまに何だろう、こいつ

普段はにこにこ笑って
裏では幼なじみと体だけの関係を持って
人の恋愛に手も口も出してきて



清「お前らおかしいな」


小「先輩とそんなに変わらないですよ」


そんな訳ないやろ
めちゃくちゃな事してんぞ


1度振り返って睨みつける


こたが少し笑う


小「仮屋瀬先輩だって今はこっち側なんだから、仲良くして下さい」


仲良く?


清「…俺にもそうしろって事?」


小「まさか!六花先輩は無理ですよ」


清「無理ってどういう意味?」


小「言ったじゃないですか、恋愛体質ですねって」

「あ、でもみなとならいいのかな?あの人とするならみなとと遊んだ方が嫌な思いしませんよ」


俺がみなとの表情を見てたからや、と思うと癪に障る

どうせ俺には出来ないと思ってるくせに




清「俺のこと嫌いなん?恨まれるような事した?」


タッタと音がして、こたが横に並ぶ


小「嫌いな訳ないし!これからも仲良くして下さい」

急に甘えるような声でいつもの笑顔を見せる




部活前だと言うのに、本当に疲れきってしまった


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